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2018-07-24 16:12 | カテゴリ:モーツァルトの歴史

モーツァルトのトレードマークとも言える赤いコートの史実について検証していくシリーズ第二段です。

 

目次(記事が公開されたらリンクがつながります):

モーツァルトの赤いコートの謎に迫る①赤いコートは実在した?

モーツァルトの赤いコートの謎に迫る②大人サイズの赤いコート

モーツァルトの赤いコートの謎に迫る③男爵夫人におねだりした赤いコート

モーツァルトの赤いコートの謎に迫る④ミュージカル「モーツァルト!」の赤いコートの史実に迫る

 

●ヴァルトシュテッテン男爵夫人からもらった赤いコート

 

上の家族の絵の1,2年後の1782年9月、ウィーンにやってきたモーツァルトは、街で見かけた赤いコートに心を奪われ、パトロンだったヴァルトシュテッテン男爵夫人にこんな手紙を書きます。

 

wegen dem schönen rothen frok welcher mich ganz grausam im herzen kitzelt, bittete ich halt recht sehr mir recht sagen zu lassen wo man ihn bekomt, und wie theuer, den daß hab ich ganz vergessen, weil ich nur die schönheit davon in betrachtung gezogen, und nicht den Preis. – den so einen frok muß ich haben, damit es der Mühe werthe ist die knöpfe darauf zu setzen, mit welchen ich schon lange in meinen gedanken schwanger gehe; – ich habe sie einmal, als ich mir zu einem kleide knöpfe ausnahm, auf dem kohlmark in der Brandauischen knöpffabrique vis a vis dem Milano gesehen. – diese sind Perlmutter, auf der seite etwelche weisse Steine herum, und in der Mitte ein schöner gelber Stein. – Ich möchte alles haben was gut, ächt und schön ist!

http://dme.mozarteum.at/DME/briefe/letter.php?mid=1263&cat=3

 

「あの赤いコートは、私の心を不思議にくすぐります。どこで買えていくらくらいするのはは忘れましたが、それは、値段ではなく、その美しさばかりに気を取られてしまったからです。

 

あのようなコートはぜひ手に入れなければなりません。長い事思いを温めていたボタンを付ける価値があるからです。(中略)このボタンは、真珠貝で、周りは白い石で飾られ、真ん中には美しい黄色い石がはめてあるんです。

 

私は、良いもので、本物で、美しいものはなんでも欲しいんです!」

 

そして、そのコートを実際に男爵夫人に買ってもらう約束を取り付けたモーツァルトは、すぐに喜びの手紙を出します

 

Allerliebste, Allerbeste, Allerschönste,
Vergoldete, Versilberte und Verzuckerte,
Wertheste und schätzbareste
Gnädige frau
Baronin!

und das war, mich zu bedanken daß sich Euer gnaden gleich so viel Mühe wegen dem schönen frok gegeben – und für die gnade mir solch einen zu versprechen!

 

 

「最も素敵で、最高で、最も美しい、金をかぶせて、銀をかぶせて、砂糖もかぶせた、最も高貴で、最も尊敬すべき、慈悲深き男爵夫人どの!

(中略)

あの美しいコートに、あれほど骨を折っていただき、私に一着約束して下さった事に、お礼を申し上げることでした。」

(この手紙は全体的にものすごくテンションが高く、モーツァルトの飛び上がるような喜びにあふれています。)

 

 

・・とこんな風に、モーツァルトはウィーンで、ヴァルトシュテッテン男爵夫人に赤いコートを買ってもらいました。時系列的に考えると、家族の肖像画のものと、このウィーンで買ってもらったコートは別物ということになりますね。

 

これを、「第四の赤いコート」とします。

 

●「第四の赤いコート」と発見された肖像画

 

このヴァルトシュテッテン男爵夫人にもらった赤いコートがどのようなものであったのかは、近年までわかっていませんでした。

 

なにしろ、モーツァルトの肖像画だと確実に言えるものは少なく、その中でも大人の姿でカラーのものは、上の家族肖像画と、ランゲの未完の肖像画くらいしかなかったのですから、探しようがありませんでした。

 

ところが、2008年3月になって、モーツァルトの肖像画が新しく発見され、大ニュースになりました。

 

430px-Hagenauer_Mozart_mid-1780s_press_quality_thumb

File:Hagenauer Mozart mid-1780s press quality.jpg - Wikimedia Commons

 

以下の記事によると、この絵は、「第一のコート」を着た12歳のモーツァルトの絵を所有していたのと同じ、父レオポルトの友人で、ザルツブルクの家の家主のハーゲナウアーのコレクションの中の一枚で、モーツァルトのホンモノの肖像画であると確認されています。

 

この絵が描かれた時期は、1780年代中頃とされ、上記のヴァルトシュテッテン男爵夫人への手紙にあるボタンに似た物が付いていることから、これがまさに「第四のコート」であるとも、以下の記事に書いてあります。

 

New Wolfgang Amadeus Mozart portrait found - Telegraph

 

●モーツァルト死亡時の財産目録

 

また、1791年にモーツァルトが無くなった時の死亡目録にも、赤いコートが記載されています。おそらく、この「第四のコート」を死亡時まで手放さずに、大事に持っていたのでしょう。

 

英訳版のリストですが、スプーンや靴、衣装に混じって6行目に、red cloth dittoとあります。dittoとは同上という意味ですので、「赤い布製のコートとベスト」ということになりますね。(他に白と青のコートとベストのセットなど、沢山の衣装も持っていたようです)

 

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Mozart: A Documentary Biography - Otto Erich Deutsch p585

 

これで、モーツァルトが大人になってから来ていた赤いコートのうちの一つは実在して、絵画も残っていることがわかりました。

 

●ウィーンのモーツァルトハウスに展示されている赤いコート

 

実は、ウィーンのモーツァルトハウスに、赤いコートが展示されています。ここは実際に行ってみると、特に説明もなく、オーディオガイドでは上記の男爵夫人への手紙の内容を聞くことができますが、実はこれはレプリカで、上記の第一から第四のどのコートにも似ていません。

 

しかし一応、公式の博物館に展示しており、通常撮影不可ですが、この日は特別に撮影可だったので、資料として貼っておきます。

 

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このコートは、実在していたわけではない可能性が高いですが、ミュージカル「モーツァルト!」日本版のポスターのヴォルフガングや、ウィーンの舞台版のアマデが着ている赤いコートは、おそらくこのデザインを元にしていると思われます。

 

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ウィーン版のアマデの着ている赤いコート。宣伝用の動画撮影のYoutube動画より切り出し。

 

(次は、ミュージカル「モーツァルト!」に登場する赤いコートとその出所を検証します)

 


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