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2018-07-27 16:12 | カテゴリ:モーツァルトの歴史

モーツァルトのトレードマークとも言える赤いコートの史実について検証していくシリーズ第4段です。

 

目次:

モーツァルトの赤いコートの謎に迫る①赤いコートは実在した?

モーツァルトの赤いコートの謎に迫る②大人サイズの赤いコート

モーツァルトの赤いコートの謎に迫る③男爵夫人におねだりした赤いコート

モーツァルトの赤いコートの謎に迫る④ミュージカル「モーツァルト!」の赤いコートの史実に迫る

 

●ミュージカルで登場する赤いコート

 

それでは、ミュージカル「モーツァルト!」で それぞれの赤いコートがストーリー上、どの場面で登場して、どのようないわれがあるのか、検証していきましょう。

 

ドイツ語版のモーツァルト!は、大きく分けてウィーン初演版、ハンブルク版、ウィーン再演版の三種類があり、日本版はウィーン初演版を元にして、所々他のバージョンの改変を追加しています。

 

★ウィーン初演版(ほぼ日本版と同じ)

 

ではまず、ウィーン初演版を見て行きましょう。

 

「赤いコート」の場面はザルツブルク。時期的にははっきりはしませんが、パリ旅行の前ですので、おそらく1775-77年前半の間ごろ、ヴォルフガング19-21歳ごろだと思われます。この場面で、赤いコートに言及しているのは、以下の歌詞の部分です。

 

[Wolfgang]
Als wir als Klimperkinder
Durch ganz Europa tour'n fuhr'n
Trug ich wenn ich auftrat
Immer den nämlichen Schock-Rock
Ganz à la mode: rot!
[Nannerl]
O ja, ich erinn're mich
[Wolfgang]
Der war ein Präsent...
[Nannerl]
Ich weiss...von der Kaiserin
[Wolfgang]
Doch dann hat er mir nicht mehr gepasst - dumm!
Seither trag ich grau und hab's immer gehasst, drum
Trag ich ab jetzt nur noch diesen hier!
[Nannerl]
Genau derselbe Rock nur grösser!

[Wolfgang]
Sag schon, Kanaille!
Wie steht er mir?
[Nannerl]
Samt und Seide!
Goldne Fäden!
So ein Rock ist nicht für jeden
Die Welt wird sich die Augen reiben
Du bist ein Prinz und wirst es bleiben

 

要約すると、「子供時代にヨーロッパを駆け巡っていた時、いつも真っ赤なコートを着ていた。それは皇后様(=マリア・テレジア)からの贈り物だった。サイズが合わなくなったので、全く同じだがサイズの大きいものを着ることにした。絹でできていて金糸の縁取りだった」となります。

 

また、その後、レオポルトが入ってきて、どこから手に入れた?と聞かれ「博打で勝った金で、自分で買った」と答え、父親に怒られる、という流れです。

 

ここで史実として正しいのは、ザルツブルク時代に錦糸に縁どられた赤いコートを持っていた(家族肖像画に描かれたものが実際存在したとすれば)、ということです。

 

また、史実と異なっているのは、「皇后さまから頂いたコート」は実際は赤ではなく藤色であったということです。モーツァルトが当時から自由になるお金があって、博打ができたかも、疑問の余地があります。演奏旅行費用などで、家族には借金があったとされているからです。

 

この場面は、史実は本当だが、色はフィクションということになりますね。

 

★ハンブルク版

 

ハンブルク版では、「赤いコート」のシーンが完全に削られ、子供時代から大人になってからも、赤いコートについて言及されることはありません。

 

★ウィーン再演版

 

ウィーン初演版とハンブルク版では、神童時代のコンサートは12歳のモーツァルトがパトロンのメスマー博士の前で演奏するという場面でしたが、ウィーン再演版はガラッと変わり、6歳のモーツァルトがシェーンブルン宮殿でマリア・テレジアの前で御前演奏をする設定になっています。

 

それに伴い、マリア・テレジア本人がモーツァルトに「赤いコート」を下賜する場面が登場します。Der Prinzenrock meines Sohnes Maximiliian. Er passt ihm nicht mehr, und jetzt sollst du ihn haben.(私の息子のマキシミリアンのコートよ。もう合わなくなってしまったので、あなたにあげましょう)というセリフと共に、アマデが受け取り、その場で袖を通します。

 

この場面で史実と合致しているのは、6歳の時にシェーンブルン宮殿でマリア・テレジアの前で演奏したこと、そして、マキシミリアンのお下がりのコートをもらったことです。ただ、今まで見てきたように、史実ではコートの色は赤ではなく藤色でした。

 

12歳メスマー邸のコンサートも、6歳マリア・テレジア御前コンサートも、どちらも史実通りです。再演で改変されたのはおそらく、ウィーンの観光地や有名なエピソードを取り入れるためだったのではないかと思います。

 

参考記事:舞台はウィーン! モーツァルトとメスマー博士③神童モーツァルトはいつどこで誰のために演奏した?

 

・まとめ

 

というわけで、ウィーン初演場、再演版、どちらも「マリア・テレジアからもらったのは赤いコート」という前提で話が続きますが、実は史実とは違ったということがわかりますね。

 

しかし、あまり知られていない「マキシミリアンのお下がり」という事実が入っていることからも、クンツェ氏は「実際は藤色であった」事を知っていて、敢えて話を分かりやすくするために、赤いコートと改変したのではないかと思います。

 

また、有名なBarbara Kraftのモーツァルトの肖像画のおかげで、モーツァルトといえば赤いコートというイメージが定着していますので、ここで史実に忠実に藤色にしてしまうのも、逆に野暮かもしれません。「赤いコート」のシンボル性や知名度を優先した、クンツェ氏の判断だったと推測されます。

 

こんな風に、「赤いコート」の史実とフィクションを検証してきましたが、史実がわかればわかるほど、改変部分の妙が見えて来たり、クンツェ氏の意図が見え隠れして、作品の理解が進む気がします。

 

また、色々とモーツァルトの史実を検証していきますので、お楽しみに!

 


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