2016-12-10 16:55 | カテゴリ:オーストリアの政治

前回の記事で、オーストリア大統領選の結果について詳しく書きましたが、今回はオーストリア人の投票傾向をまとめておきます。

 

オーストリア大統領選挙についての過去記事は、舞台はウィーン! オーストリアの政治のカテゴリからどうぞ。

 

●投票傾向分析

 

この分析は、それぞれの候補に投票した理由、性別、年齢、職業、学歴の統計です。

 

http://diepresse.com/home/politik/bpwahl/5128276/Wahlgrafiken_Wer-waehlte-wen-warum

 

選挙翌日の新聞には出てる内容なので、今頃墺人は皆知ってる内容ですが、まとめておきますね。

 

・投票理由

 

まず、投票理由が興味深い。

 

ファンデアベレンへの投票理由は、1.外国に対して墺国を代表するのにふさわしい、2.親EU、3.職務を正しく理解している、4.仕事ができる、5.信心深い。

 

対してホーファーへの投票理由は、1.我々のような人たちの懸念を理解してくれる、2.仕事ができる、3.今の政治に対抗できる、4.大きな変革をもたらせる、5.信心深い。

 

やはり思った通り、ファンデアベレンは、国を代表し、大統領としてのポジションにふさわしいという点が評価され、ホーファーが票を集めたのは、何か大きく変えてくれそうという期待があったからなのね。しかし「信心深い」が両方とも結構重要なファクターなのね。。

 

また、投票の動機としては、ホーファーの方が「支持候補の当選」が半分以上だったのに対し、ファンデアベレンは「対抗候補の当選を妨害」の割合が多いのも興味深い。ホーファーが嫌だから投票した人が、ファンデアベレンの当選を望んで投票した人より多かったのはちょっと衝撃。

 

・性別と年齢

 

次に性別と年齢。女性と若者はファンデアベレンに、男性と30歳以上はホーファーに投票した傾向が強い。意外なのは、選挙権を16歳に引き下げたのに、その辺も含む若者がファンデアベレン支持が多かったこと。あと、女性がなぜこんなにホーファー嫌いなの?若くてはつらつとしてるけど胡散臭いのを感じ取ったのか?

 

 

女性はファンデアベレンに、男性がホーファーに投票したことが顕著にわかるグラフ。特に若い女性は70%近くがファンデアベレンに。若くハツラツとしたホーファーではなく、老賢人風のファンデアベレンが女性に人気。「若いイケメン候補が女性に人気」なんてウソ!政治家は見た目じゃないよ!政策だよ!

 

ホーファーは極右と言うことで、保守の行き過ぎと考えると、女性に関しても保守で凝り固まって、うちにいて育児と家事をするべきと考えてるだろうと、普通に女性は思うよね。。ホーファーの著書でもそんな感じの事を書いていたらしいし、そもそも5月の選挙でも女性は40%で、女性票集めの有効な対策を出せないままのやり直し選挙だったっぽい。

 

・職業

 

次に職業。これは衝撃的。労働者の85%がホーファーに投票したが、サラリーマン、公務員、自営業、年金生活者の半数以上がファンデアベレン支持。労働者だけ毛色が違いすぎて恐ろしいわこの国。。

 

ちなみに、労働者はレイバーインテンシブなハンドワーカーの総称で、パン屋、ウェイター、運転手、倉庫労働者、家具などの据え付け労働者、大工など。サラリーマンと比べて法的保護が少なく、退職通知期間が短い、病欠期間が短いなどの違いがある。

 

https://www.wko.at/Content.Node/Service/Arbeitsrecht-und-Sozialrecht/Arbeitsrecht/Beschaeftigungsformen/Arbeiter_und_Angestellte.html

 

・学歴

 

最後に、学歴。簡単にいうと、高卒、大卒になるにつれてファンデアベレン投票率が高くなり、大卒は83%。意外なのは、義務教育修了(中卒)より、職業訓練終了の方がホーファー率が高く、職業の結果と合わせて、職業訓練→ハンドワーカーの生活をしている人が、最もホーファーを支持していると言える。

 

・郵便投票

 

あと、新聞で書いてた統計で気になったこともまとめておく。前回は郵便投票前の段階でホーファーが勝っていたのに、郵便投票でひっくり返された経緯があり、ホーファーは郵便投票の開票に不正があったとイチャモンを付け、再投票となった。そんな経緯があり、郵便投票今回はどうだったかというと・・

 

普通に、郵便投票、ファンデアベレンが圧勝でしたw郵便投票前51.7%→郵便投票後53.5%。やはり、郵便投票する人はファン・デア・ベレン寄りなのね。この人達の内訳も気になるけど、さすがに出口調査はできないしねー。

 

・ウィーンと各州、都市と田舎

 

州ごとの得票率。ウィーンはファンデアベレンが65%以上で、すべての区で勝利。ほかの州でも、国境に近いケルンテンなど以外では、ファンデアベレンが僅差で勝利で、ホーファーは得票率を減らした。各州都ではファンデアベレン優勢。

 

Wahlsieger der Bundespräsidentenwahl nach Gemeinden

 

 

Präsidentenwahl: Alle Gemeindeergebnisse auf einen Blick - Bundespräsidentenwahl Ergebnisse - derStandard.at › Inland

 

全9州のうち郵便投票前には4州しか勝ってなかったのが、郵便投票開票後は6州で過半数。ファンデアベレンが負けた州は、ブルゲンラント、シュタイヤーマルク、ケルンテンと、難民流入の影響を大きく受ける州

 

ウィーンは65%がファンデアベレンと、他の州と大きく差を付けたが、他の州も州都や大きめの都市は全てファンデアベレン。ここでは、都市と田舎の差が大きく出た。

 

●移民は誰支持?

 

選挙統計的に知りたいのは、移民二世三世が誰に投票したのか。その人たちのルーツはどこなのか。逆に土着の墺人の投票傾向も気になる。どちらもはっきりとした数字を計算するのは不可能って分かってるけど、地域傾向より正確な割合がわかったら興味深いだろうなー。

 

ウィーンの区ごとの統計は、予想通り。ホーファー優勢の区がなくなった。いわゆる金持ち区や、家賃が高い区、中心に近い区はファンデアベレンが強い。逆に周辺区、新興区、家賃が安い区(=移民が固まりやすい区)はホーファーが強い

 

この結果からは、移民2世3世がホーファーに投票したのか、移民が増えて肩身が狭くなった土着墺人が投票したのかははっきり分からないなー。どちらにしても、移民と労働者はホーファー、高所得者と女性はファンデアベレンって傾向は変わらず。

 

●投票先の変更

 

この統計は面白い。5月の決選投票から、投票先を変えたのは誰か

 

Wählerströme: Wer die Seiten wechselte, wer zuhause blieb « DiePresse.com

 

前回投票しなかった人たちの多くがファンデアベレンに。前回ホーファー→今回ファンデアベレンの方が、逆より多い。最初の投票で別の候補に投票した人たちもファンデアベレンに。ホーファーは各方面で票を失った

 

●まとめ

 

ここまで軽くまとめると、ファンデアベレンを支持したのは、都会住民、若者、女性、高卒以上、労働者以外の職業、単なるホーファー嫌い

 

ホーファーを支持したのは、田舎住民、難民流入で影響を受けた州、30歳以上、男性、職業訓練卒、労働者って感じですねー。

 

 

●ファンデアベレンってどんな人?

 

あと、オーストリア人なのに、ファン・デアがつくのはどういうわけ?と気になる人がいるかもしれないけど(ドイツ語系の名前は「フォン」で、「ファン・デア」はオランダ系)、ファンデアベレンの経歴は結構スゴイ。

 

母親はエストニア人、父親はオランダ系ロシア人。ナチ時代にロシア軍に追われ、ドイツ経由で難民として逃げてきた先のオーストリアのチロル地方で生まれる。名前に「ファン・デア」がついてるのは、父親がオランダ系だからだけど、ロシアから逃げてきたのね。そのままチロルで成長し、インスブルクの大学で経済学を学び、後にこの大学とウィーン大学で教授となった。

 

そのままチロルで成長し、インスブルクの大学で経済学を学び、後にこの大学とウィーン大学で教授となった。これだけでもすごい人生なのに、更にオーストリアで社会党に入り、後に緑の党の党首を務める。現在73歳。

 

最初の妻との間に息子が二人。二年前に再婚した52歳の妻は80人の従業員を抱える経営者で、ファーストレディになっても仕事は続けるとのこと。

 

 

というわけで、長らく書いてきたオーストリア大統領選の記事ですが、まさかほぼ一年の長丁場になるとは!最初は選挙ポスター比較で遊んでたのに、ここまで追っかけることになって、自分でもビックリですw

 

自分自身現地の政治に興味を持って追いかけるきっかけになったし、自分が実は選挙ポスターウォッチャーであることがわかったしw、自分の身を守るためにも、現地の政治(と身の回りの支持者たち)には気を配っておくほうが良いことが実感できたので、いい勉強になりました。

 

これからも気が抜けないオーストリアの政治ですが、また何か興味を引くことがあったら、記事にするかもしれません。かなりお堅い話ですが、たまーに挟まる程度だと思うので、お付き合いくださいませ。

 

 

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