2016-05-31 16:10 | カテゴリ:ミュージカル系雑談
エビータのクンツェ氏訳の独語版は、かなり意訳して骨子を残していると書きましたが、エビータが貧しい田舎娘から、自由を求めてブエノスアイレスにやってきて、貧しい人たちの代表者として大統領夫人になったというストーリーを描いていますね。これって、英語版にはなかったこと。

 

どこでそれを強く感じたかと言うと、マガルディにブエノスアイレスに連れて行ってと言うEva Beware of the Cityの歌。英語版はこんな歌詞です。

 

I'm gonna be a part of B.A.
Buenos Aires, Big Apple

 

田舎はいつも一緒でつまらない。都会に行きたい、ブエノスアイレスの一部になりたい、と言う歌。

 

それが、ドイツ語版では、

 

Ich will einmal frei sein, richtig frei sein

Buenos Aires, Big Apple

 

うろ覚えですが、何度もFrei sein自由になりたい、と言うのを繰り返していたのは耳に残っています。

 

英語版では都会の刺激を求めて田舎から逃げたがっていたエバですが、独語版では「自由」を求めているわけで、エバの性格付けがかなり変わってくる感じです。

 

そして、この、束縛からの自由と言うテーマは、まさにエリザベートのテーマでもあります。(他にも、Ich war noch niemals in NYの元歌とか、モーツァルトの「影を逃れて」とか、束縛からの自由はクンツェ作品に共通するテーマです)

 

 

次に、Don't cry for me Argentinaの歌詞もちょっと比較してみます。

 

まず英語版。もう覚えるほど歌ったことのあるこの歌詞です。(カラオケでの声出しの1曲目は必ずマドンナ版のこの曲を歌います)

 

Don't cry for me Argentina
The truth is I never left you
All through my wild days
My mad existence
I kept my promise
Don't keep your distance

 

「私のために泣かないで、アルゼンチンよ。実は私はずっとあなたたちと共にいた。すさんだ日々や、狂ったような経験もしたけれど、約束は守ってきた。いつも近くにいて」

 

何となく、「昔の私は酷い人生だったけど、ラッキーだったから大統領夫人になれた。だからあなたたちは貧民代表として私を支持すべき」みたいな、ちょっと上から目線な気がいつもしてました。

 

独語版はこんな感じ。

 

Wein nicht um mich, Argentinien,
so wild es auch war mein Leben,
treu bin ich immer nur dir geblieben
bis an das Ende,
reich mir die Hände.

 

「私のために泣かないで、アルゼンチンよ。私の人生もあなたたちの人生のと同じ様にすさんだものだった。私はいつも大切なあなたたちに、おしまいの時までずっと忠実です。私に手を差し伸べて。」

 

これ聞いたとき、全然英語版と印象が違うなー!と思いビックリしました。英語版が成功者の上から目線なのに対し、独語版は貧しい人たちの高さに立って歌っているから、エビータがマザーテレサのようないい人に見えて、ちょっとイメージが変わって戸惑いました。

 

なんだろうー。独語版のエビータは、自分が貧しい田舎出身だから、常に貧乏人の味方で、まさに聖女。だから、チェが批判していることが的外れな感じがしてきます。

 

英語版は、一応貧しい生まれだけど、野心も美貌もあってのし上がって来て、大統領夫人になっても微妙に上から目線で「私は貧しかったけど、運と実力でのし上がったあなたたちの代表」みたいな感じに聞こえますよね。。

 

だからこそ、後半のファッションの歌とか、カネカネの歌とかが、野心と自己顕示欲の延長と言う感じがしてスムーズに進むんだけど、独語版だと、なんでこんな無私で聖女みたいないい人が、ファッションにお金を掛けたり、短絡的な政策を行ったり、副大統領になりたいとか言ったりするんだろう?って思っちゃいます。

 

で、結論が、エビータは気持ちは慈善家で、善良な意図をもって行動していたけど、政治や経済の知識不足のために失敗しちゃった、ちょっと若すぎたおバカさん、みたいな人物として理解してしまう。英語版の計算された野心家なエビータ観がガラッと変わります。

 

なんだか、今回のエビータ見てちょっと戸惑ったのは、この独語訳の解釈が、聴きなれた英語版とずいぶん違ったからかなーと言う気もします。

 

 

 

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