2015-12-27 16:04 | カテゴリ:クリムトの歴史

「黄金のアデーレ」に関連して、アデーレと共に取り返された絵画の運命を二回に分けてお送りしています。

 

アデーレ関連の記事は「クリムトの歴史」カテゴリをどうぞ。

 

今回は、アデーレが遺言で絵画を遺した夫Ferdinandの死と、戦後の絵画復興の努力についてです。実際はこのようなケースが多数あり、ロスチャイルド家の財産などは桁違いだったようです。

 

==Ferdinandの死と戦後==

 

1945年にFerdinandはスイスで亡くなる。Ferdinandが生前に新しく依頼した代理人Rineschは、何度か絵画を取り戻す手紙をオーストリアギャラリーに送っていて、Ferdinandもこのことを知っていた。この人物はFerdinandの死後、甥Robert Bentleyの代理人も務め、多くの手紙がオーストリアギャラリー等とやり取りされている。

 

ドキュメンタリー映像によれば、この代理人に依頼して絵を取り返そうとしていた頃は、Ferdinandの遺言の事を関係者は知らなかったとのこと。一方、アデーレの遺言の事は知られていた模様。

 

1948年、代理人Rineschはオーストリア側のGarzarolli氏と直接会い、アデーレの遺志を継いで、彼女の絵画6枚をオーストリアギャラリーに寄贈すると相続人たちが同意したと伝えた。その交換条件として、他の絵画は国外に出すよう要請した。

 

この書類は署名され、『アッター湖のウンターアッハの家々』の絵画もオーストリアギャラリーの所有物とすることも許可した。

 

Häuser in Unterach am Attersee 1916

「アッター湖のウンターアッハの家々」Häuser in Unterach am Attersee, 1916

 

最終的に1961年にすべての絵画がオーストリアギャラリーに揃った。この時点で、一旦この事件は一件落着している。6枚の絵画はアデーレの遺志に基づき、オーストリアギャラリーに飾られ、アデーレの夫の相続人たちも、この状態を正式に承認した形で落ち着いていた。

 

(アルトマン側が作成した資料によると、この代理人RineschとGarzarolliの間の取り決めは、相続人たちのあずかり知らぬところだったとされている。RineschはRobert Bentleyのみとコンタクトを取り、Luise Gutmannとマリア・アルトマンはこの経緯について全く知らなかったとのこと。

 

また、このやり取りは、Rinesch氏が他の絵画(ヴァルドミュラー、Petterkofen, Dannhauser, Ranftl等のを国外に出すための交換条件として、クリムト絵画たちをオーストリアギャラリーに寄贈する目的だった。

 

この際、代理人Rineschは、クリムトの隠し子が所有していた絵画も含め、全ての絵画がオーストリアギャラリーに戻るよう、手助けもしている。)

 

==絵画復興Art Restitutionから訴訟まで==

 

時は過ぎ、1998年になって、ナチスに持ち去られた絵画を返却する法律がオーストリアにて作られる。(法律全文はhttp://www.bslaw.com/altmann/Klimt/Summary.pdfのp94ページ以降)

 

実際にはその直前にNYの美術館に貸与されていたシーレの絵の所有権をめぐって対立が起きた際に、オーストリア側は後ろ暗いことがないことを示すため、書庫を解放し、ジャーナリストによる調査が行われ、「アデーレ」の絵の帰属権が疑問視される文書がフベルトゥス・チェルニンによって発見され、アルトマンに連絡が行った。

 

このチェルニンの調査がなければ、アルトマンは絵画を取り戻せることはあきらめていたわけで、チェルニンの存在の重要性が際立つ。

 

チェルニンの調査を受け、1999年にはGehrer大臣により、Ferdinandの16枚のクリムトデッサンと19点の陶磁器は返却するが、クリムト絵画は返却しないとする声明を出した。こちらのがその声明の内容。

 

 

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簡単に要約すると、この絵画は1925年の時点でオーストリアギャラリーの所有物であったので、ナチに酔って奪われたわけではなく、ブロッホバウアー家は、この絵画がアデーレの遺言の基づき、オーストリアギャラリーに所属すると確認していた。1936年の時点ですでにFerdinandがカンマー城IIIを寄贈していた事実も、その証拠となる。

 

ということです。チェルニンによって、絵画を取り返せると希望を持った時に、この声明が出るというのは、アルトマン側にとってはかなり感じ悪い事だったでしょうね。。

 

けれど、オーストリア側が言っていることも、この時点では別に何も間違ったことではなく、単に「アデーレの所有物はアデーレの遺言の通りにして、(粗末に扱ったり隠したりしているわけではなく)ちゃんと展示していますよ」ということ。お互い平行線を脱せず、この後訴訟となります。

 

 

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