2014-09-25 06:35 | カテゴリ:モーツァルトの歴史

さて、前回の記事で、「モーツァルトが弾いた当時のチェンバロの音色が聞けるCD」をお客様のご要望で発見し、とても喜んでいただいたというお話を書きました。

 

今回は、さらにそのチェンバロの出処の謎解きをしてみます。こういうのって始めちゃったら止まりませんよねー(笑)。

 

●謎解きの続き

 

お客様に回答したメールで少し気になるのは「モーツァルトが実際に使った楽器であるかは推定と言われています」の部分ですよね。本当にこのチェンバロをモーツァルトが演奏したの?記録に残っていないにしても、このチェンバロとモーツァルトの間には何らかの関係があるはずだよね?って思いませんか?

 

さて、この記事を書くにあたって、もう少しこのモーツァルトと、この演奏に使われたチェンバロを作ったチェンバロ職人Burkat Shudiについて調べてみましたので、謎解きの続きもお楽しみください。

 

●チェンバロ職人Shudiとモーツァルトの接点

 

スイス人チェンバロ職人のBurkat Shudi(スイス名はBurkhart Tschudi)は、ロンドンでチェンバロのアトリエを持って仕事をしていました。Shudiは当世随一のチェンバロ職人で、当時の有名な作曲家(ヘンデルやハイドンなど)や王侯貴族(マリアテレジア女帝、ドイツのフリードリヒ2世、イギリス王ジョージ3世)とも交流がありました。

 

File:BurkatShudi.jpg

Schudi一家の肖像画はロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーにあるそうです。一番左がSchudi。

 

File:ClavecinShudi.JPG

Schudiがジョージ3世のために作ったチェンバロ

 

そんなShudiに、演奏旅行でロンドンに来ていたモーツァルトが出会い、彼のチェンバロを演奏することをとても喜んだと言われています。9歳の時のモーツァルトが1765年夏にロンドンのShudiのアトリエを訪れ、Shudi作のチェンバロを演奏したという記録が、父レオポルドの手によって残っています。

 

●1765年にモーツァルトが実際に演奏したチェンバロのその後

 

実はこの1765年にモーツァルトがロンドンのアトリエで弾いたチェンバロは、Schudiがドイツのフリードリヒ2世の注文を受け作成したもの(Nr. 496)で、この後でドイツのサンスーシ宮殿に届けられます。

 

(Schudiはこれ以前に1745年に一つ、これ以後1765-66年の間にNr. 511と512をフリードリヒ2世のために作っています)

 

この、フリードリヒ2世に注文され、9歳のモーツァルトがアトリエで引いたチェンバロは、1932年にフリードリッヒ大王のBreslau城(現Wroclowポーランド)にて発見されます。このチェンバロは第二次世界大戦までこの城にありましたが、その後失われてしまったと記録されています。

 

調査によると、第二次世界大戦中に、このチェンバロを所蔵していたWroclow城博物館は、重要な所蔵物をSilesia地方の各地に隠しました。このチェンバロはPrudnikに隠され、その後その地域か、すぐ近くの国境を越えたチェコの博物館に所蔵されたと考えられますが、発見はされていません。

 

これが、1932年に撮影された、1765年にモーツァルトが実際に演奏したSchudiのチェンバロNr 496です。

 

WS000007

 

Shudi's Harpsichords for Frederick the Greatより)

 

●1771年制作の、CDで演奏されているチェンバロについて

 

このCDに使われているのは1771年作のチェンバロですので、モーツァルトがこの1965年に演奏したのとは別の楽器のはずです。

 

そういう意味では、この1771年のチェンバロは、モーツァルトが実際に触ったことのある楽器であるかどうか確定したわけではないですが、当時のモデルであり、かつモーツァルトが使用したチェンバロを作った職人の作であることは確実です

 

Schudiとモーツァルト家は長く交流があったので、他の機会に演奏された可能性は十分ありますし、実際モーツァルトが訪れた貴族の家にShudi作のチェンバロがあったとの記述もあります。

 

現在この1771年作のチェンバロはShudiの故郷であるスイスの

Museum des Landes Glarusに所蔵されていて、時々このチェンバロでモーツァルトを演奏するコンサートが開かれているそうですMozart im Freulerpalast - glarus24.ch

 

また、このコンサートの記事を探していたら、この1771年のチェンバロの演奏写真も出てきました。

 

Ein musikalischer Abstecher in die Biedermeierzeit - glarus24.ch

 

この記事にも説明がありますが、1771年のチェンバロ=モーツァルトが弾いたというわけではなく、「モーツァルトが1765年にチェンバロと同じ職人による作品」と記載されています。

 

この博物館のサイトにも、おそらくこのチェンバロと思われる写真があります。

 

-(neues Fenster öffnet Foto in Originalgrösse)

Museum des Landes Glarusのサイトより。

左端に鍵盤の楽器が見えますが、新聞記事のものと似てますね。

 

というわけで、モーツァルトが実際に弾き、現在は失われてしまった1765年のチェンバロと、モーツァルトが弾いたかどうかは定かではないが、同じ職人によるチェンバロで、このCDで使われた1771年のチェンバロは、両方写真で確認することができ、調査としては大満足です。

 

 

参考までに、Shudi作ではありませんが、1780年にウィーンで作られたモーツァルトのコンサート用のピアノがこちら。

 

Mozarts Konzertflügel - um 1780 in Wien gebaut
Mozarts Konzertflügel - um 1780 in Wien gebaut

 

というわけで、謎解きしていくうちに色々と興味深い事実がわかってきましたねー。モーツァルトは9歳にしてロンドンに演奏旅行に行って、当代随一のチェンバロ職人のアトリエまで訪れていたんですね!なんだか当時の交通機関を考えると、気が遠くなるような話です。

 

 

●今までに調べたもの

 

今回はモーツァルトのCDとウィーンらしいお問い合わせでしたが、他にも「デザインのかわいいドイツ語手芸本」「盛り付けのステキなオーストリア料理の本」「日本語で読んで気に入った絵本の原語(フランス語)版」「おすすめドイツ語クリスマス絵本」「振付家○○のバレエのDVD」など、ミュージカル以外の書籍やCD,DVDを探すお手伝いもしたことがあります。

 

ウィーン・ミュージカル・ワールド」では、音楽の都ウィーン在住のネットワークと語学力を生かして、できるだけお客様のご希望に合った商品を、ヨーロッパ内くまなくお探しします。

 

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