2013-11-23 00:12 | カテゴリ:フォルクスオーパーVolksoper作品

●キャスト編

 

・スウィーニー・トッド

 

ミュージカル界では有名ではないけど、実は彼は有名なオペラ歌手。オペラ歌手がミュージカルの主演とか!!発声とかかなり違うし、演技も相当必要なのに、よくOKしたなあ、この人。

 

しかし、見てみて超納得!オペラ歌手とは思えない(失礼!)超迫力の演技派スターさんでした!!!歌ももちろんすごかったけど、それより醸し出す雰囲気や悲哀や狂気の表情があまりに迫力で、彼のおかげでこの作品がぐーんと深くなったのが感じられた。オペラ歌手でここまで演技できるってすごいことだよ!!!!!ミュージカルやストプレ役者だって、ここまで演技できる人を探すのは難しいのでは?

 

まず、長身にグレーの長髪で自信ありげな立ち姿がかっこいいー!やっぱりスウィーニー・トッドはかっこよさもないとね!

 

剃刀を手にしたときのあの有名なせりふ「これで私の右手は完全だ!」Mein rechte Hand ist Ganz!の時のあの得意げで恍惚とした表情!そして、オペラ歌手なのにこのセリフの重々しいこと!!!

 

判事を逃した後、怒り狂って歌うソロの狂ってること!目をむいたまま見下ろし、口をニヤリとさせる、この独特の表情が壮絶で迫力!!!顔と声の表情だけで「ここで狂った!」って見ててピンと来させるのがすごい!

 

おまけに今思い出してもスローモーションで再現されるのが、死ぬ瞬間のあの動き!!

 

トビアスに首をかき切られ、そのままのけぞって動かないトッド。死なないのかと思ったら、驚いたような無表情のまま、超スローモーションでゆーーーっくりと緩慢に前に倒れ、抱きしめた妻の上に覆いかぶさっていく。

 

悪いやつなのに、何て泣ける死に方なんだ。。あんな死に方する主人公初めて見たよ。。心に余韻残り過ぎだ。

 

 

と、演技ばかり褒めましたが、歌がまたほんとすばらしかったのよーー!!オペラ歌手なのに、ミュージカルの歌い方完全にマスターしてるってどういうことよー!

 

オペラ歌手がミュージカル歌ったら、不自然に朗々としてるところがあるでしょ?彼はまったくそんなことないの!っていうか、オペラ歌手がやってるって絶対気が付かないよ!

 

オペラチックではなく、しっかりと一音一音表情の乗った深い美声。超難曲ソロを歌いながら、顔と声の表情を一音ずつ変えながら、完璧にコントロールされて歌声を操る。もう神業としか思えん。。

 

演技も歌もこんなにずば抜けてるのに、おまけにあの長身と悲哀を含んだ傲慢さが、もうかっこよすぎる。。

 

なんで理髪師ごときがあんなに偉そうでかっこいいんだ、って突っ込みそうになるかと思ったら、何の違和感もなく、このスウィーニー・トッドのヒーロー的カッコよさにクラクラ来てしまいそうでした。こんなかっこよかったら、理髪師じゃなくてもっとかっこいい仕事(将軍とかw)が似合うよ!!

 

・ラヴェット夫人

 

スウィーニー・トッドがオペラ畑の人だけど、このおばちゃんはミュージカル界から!それもなんという実力派を連れてきたことか!

 

最近のVBWミューを見てた人ならお馴染みのDagmar Hellbergおばちゃん。シスターアクトで修道院長を演じ、そのあとすぐにエリザベートでゾフィーを演じ、合間にはフォルクスオーパーでラヴェット夫人と、超精力的に活躍中。

 

それもそのはず、ほんとこの人安定して素晴らしい歌声だし、難曲も何のそのだし、演技力もお墨付き。見た目は普通のおばちゃんなのに、そりゃ引っ張りだこのはずだよ!

 

ゾフィーはあまり歌うところがなかったから、それほど堪能できたわけじゃなかったけど、ラヴェット夫人はもう、水を得た魚のように超難曲をコミカルにシャキッと歌い上げてくれる!

 

よくあんなリズムも取りにくくて、音程は不協和音ばっかりの早口の歌を、笑いを取りつつスイスイ踊って歌えるものねー!もう、彼女の上手さ、ソツなさには舌を巻くわ。。。彼女で見てしまったら、なかなか他に満足するラヴェット夫人は出ないだろうな。

 

ほんとコミカルな演技が楽しいの!こんなダークで残酷な話なのに、結構彼女のおかげで笑わせてもらったわ。この役がなければ単なるどよーんミュージカルで終わってたところだったわ。

 

・判事

 

みんな大好きRobert Mayer!!いつもいい役ばっかりだったけど、今回は本格的な悪役。さすがブルク劇場役者だけあって、素晴らしい悪役っぷりでした。

 

いつも好々爺みたいなニコニコ姿を見てるもんだから、登場してすぐに上半身脱いで、トッドの妻を犯してるシーンは衝撃だったわ。

 

そのあともまた上半身脱いで、ジョアンナに欲情する自分に鞭打つシーンも壮絶。ほんと役者だわ。。

 

なのに、理髪店に入ると、ジョアンナのために男前になろうとひげをそるのがチャーミング。トッドとのデュエットでポンポンポンとハミングして、トッドが口笛拭いてるシーンが、すごい緊迫しててゾクゾク来た!

 

2幕はあまり出番なかったけど、さすがにものすごい存在感のある判事でした。

 

・トビアス

 

最初超脇役かと思ったら、最後は重要人物だった。

今まで知らない役者さんだけど、あまりに演技も歌も素晴らしくて大感動した。ちゃんと覚えておこーっと。

 

。確かにピレッリの営業ソングや、2幕最初のパイの営業ソングのソロが際立って素晴らしくて、こいつタダモノじゃない!って思ってたけど、まさか最後のソロ(ラヴェット夫人を守ってあげる歌)であそこまですごいとは!!!

 

とっても背が低い役者さんで、子供にすら見えるくらい。だから脇役だと思ってたんだけど、あの守ってあげる歌の演技がもうあまりにすごくて。なかなか言い出しにくいあの演技。柱に隠れたり、もっと舞台右まで下がってみたり、また柱に隠れたり、もじもじしたり。もう、この動きがあまりに絶妙で(手の動きも!)、子供みたいで可愛くて、よしよししてあげたくなった!

 

で曲の最後はラヴェット夫人のスカートに顔をうずめて「僕が守ってあげるからね!」って、幼い子供がママに言うみたいに、完全に無垢に。ああーー!なんか自分の息子にそんなこと言われたら、泣いてしまうわーー!と思いながら、うっすらと泣いてしまった。

 

このダークで残酷なストーリーの中で、心が洗われる瞬間にひやっとする。オトナの事情や悪に手を染めてそれが自然になった話の展開に慣れきって、ラヴェット夫人のブラックジョークで笑えるようになってしまった自分に、無垢な光を投げかけるのが、このトビアスの純粋さ。(あともう一つ、殺人を繰り返すトッドの理髪店に、5歳くらいの娘を同伴したパパが来て、殺さないエピソードも「無垢」が光る瞬間。)

 

ほんと、このトビアスはストーリーのかなめになってる。ラヴェット夫人が何気なく見せた財布が元主人ピレッリのものだったことから、トビアスはトッドが彼を殺したと疑ったので、ラヴェット夫人は、トビアスを騙してパン焼き部屋に閉じ込める。人肉をひき肉にする機械の使い方を教えられたら、信じてる夫人に
殺されそうなのに気がつかず、「
3回こねるのが秘訣よ」って教えたら、まじめに「3回こねる、3回こねる」って言いながら嬉しそうに機械を回すのがまた、無垢でひやっとする。

 

最後までトビアスは、ラヴェット夫人は悪くなくて、トッドが悪者だと信じてる。ラヴェット夫人の死体を見て、迷いもなくトッドを殺したのも、なんだか泣ける。

 

解釈によっては、トビアスはラヴェット夫人を女として片思いしていたっていう考え方もあるけど、私が見た時は、小さい子供がママを慕う愛情があふれすぎてるって感じだった。そんなトビアスの、ママを守るため、という無垢な愛が、どす黒い中でキラッと光るようで、どす黒さに慣れてしまった自分への、戒めのような気がして、そのきらめきを直視するのが逆に怖い感じ。

 

うん。この「無垢を直視できない」って感覚が、この作品を見終わった後に心にぽつんと残るんだよ。だから、トビアスの存在が、ストーリーの凄い要になってて、考えてみたら鳥肌が立つ。

 

・狂女

 

なんか最初っから歌うまいし存在感あるんだよねー。けど、狂った演技がうまいかと思えば、結構普通に会話もできてるのね。

 

しかし、あのコートを丸めて赤ん坊をあやし始めた演技には、おもむろすぎて度肝を抜かれた!

 

いやあ、まあ、キーパーソンではあるんですが、あの演技と歌と存在感はすごかった。。

 

・アンソニーとジョアンナ

 

ジョアンナも単なる純粋可愛いヒロインじゃなくて、なんだかちょっと浮かれてる感じが、一生とらわれててテンションおかしくなった感じでリアルw。

 

キスしてキスしてってwwそればっかりww

 

しかし歌がうまくて、右上の廊下で拘束衣着てだらーんと座ってる時の声がすばらしかった。

 

アンソニーは、とてもうまいんだけど、あまり特徴のない役なので、可もなく不可もなく。あの濃い大人たちに交じると、アンソニーとジョアンナって普通すぎて影が薄いよねw。

 

・ピレッリ

 

んー。役者さんの名前は西洋っぽいけど、実はアジア人。役名はイタリア人でセニョールとか言われてるのに、見た目はどう見ても怪しい中国人ww。いや、イメージはピッタリだからいいけどw。そういえば、オペラ「愛の妙薬」でも、なんだか妙なところにアジア人が登場して、役どころ的に全然違和感なかったのを思い出した。

 

    Regie Matthias Davids

    Bühnenbild Mathias Fischer-Dieskau

    Kostüme Susanne Hubrich

    Licht Fabrice Kebour

    Choreographie Florian Hurler

    Choreinstudierung Thomas Böttcher

    

    Dirigent: Joseph R. Olefirowicz

    Sweeney Todd: Morten Frank Larsen

    Mrs. Lovett: Dagmar Hellberg

    Richter Turpin: Robert R Meyer

    Tobias Ragg: Tom Schimon

    Anthony Hope: Alexander Pinderak

    Johanna: Anita Götz

    Büttel Bamford: Kurt Schreibmayer

    Rodolfo Pirelli: Vincent Schirrmacher

    Bettlerin: Patricia Nessy

    Jonas Fogg: Franz Suhrada

    Vogelhändler: Georg Wacks

 

●気が付いた点

 

ストーリーの流れで、気になったシーンなどを箇条書きにしてみます。

 

・いきなり最初のシーンから度肝を抜かれた。何だあの音楽!難曲すぎる!どうやって歌って演奏してるんだ!?おまけに、演出がすごすぎる!最初っから巨大歯車のセットが盆に載って回る回る。ロンドンの汚い裏通りの狭さも、あの巨大セットと枠組みで天才的に表現。最初のシーン見ただけで、この作品はやらかしてくれる!って確信できる、すごいインパクト。

 

それに、なんだか音楽の重厚さとアンサンブルの規模、現代的ながら超巨大で抽象的な舞台美術が、ミュージカルと言うよりオペラを見ているような気にさせられる。このセットでアイーダとかやっても違和感なさそう。

 

今までVolksoperミュージカルって古典的だけど軽妙で楽しいコメディが多かったので、こういうへヴィー系もここまでやってくれるとは頼もしいし、あえてオペラっぽくやることで、オペラファンのお客さんの心も掴んでしまうという、一石二鳥っぷり。もう先が期待できる!

 

・少し残念なのは、早口すぎてアンサンブルが言ってることが聞き取りにくかったりする。個人的にはソロは普通に聞き取れたし、英語字幕あると思ったけどなくて、全然困らなかったけど、アンサンブルの時だけは字幕欲しいな、とちょっと思った。

 

しかし、あんなにわかりにくい曲な上、ほとんど予習で来てなくてストーリーも忘れてたのに、ほぼ全部ちゃんと聞き取れたからかなり自信を取り戻したわ(笑)やっぱりドイツ語の勉強は劇場に限るw

 

・狂女がキーパーソンっていうのは、彼女が妙に目立ってるし存在感があるので気づいてはいたんだけど(何度も言うけど映画見たのに結末すっかり忘れてたからねw)、幕間でちょっと考えたらわかってしまった(それも思い出したんじゃなくて、普通にわかったって感じ。そこまで忘れてたww)。気が付いたけど、やっぱりラストは素晴らしかった。

 

・狂女の狂い方がかなり演技的にうまい。特に最初出てきたところの、卑猥な仕草や、哀れ→爆笑の流れなんかは、どう見ても迷惑な狂女。なのに、別のシーンでアンソニーにジョアンナのことを聞かれたときは、意外にまともな会話が出てきてたね。しかし赤ん坊を抱く仕草がもう、狂ってて哀れで。。

 

・名曲ジョアンナは、やっぱりこの作品でソロで歌われることは一番多いのかな。映画の記憶がほとんどない私でも、相当覚えてたわ。

 

・一番最後がすっごく好き。結局みんな死んで、生き残ってるのはトビーとアンソニーとジョアンナだけなんだけど、この3人が最後の歌を歌いだしたら、舞台が回って、今まで殺された人たちが、殺された時の衣装で血が付いたまま登場して、アンサンブルに加わる。死者が蘇った!と思ったんだけど、これってそれ以上の意味があるよね?

 

ストーリー終わってないのに、死んだ人がこうやって語り掛けてくるのは、客席の私たちに何かを問いかけている、訴えかけてるからに他ならないと思うんだよね。

 

死人がよみがえると言えば、レミズの「空の椅子のテーブル」なんだけど、あれはマリウスの脳内幽霊でしょ?このシーンは、別に誰かの脳内で死者がよみがえってるというイメージじゃなくて、死んだキャラが客席にいる私たちに、物語を語ってるって感じなんだよね。レミズのパリのシーンや、レベッカの最初のシーンがちょっと重なった気がした。

 

とにかく、トビーの純粋さに胸を撃ち抜かれたところで、この死者全員復活(ラヴェット夫人やトッドも含めて)で、ずずーんと来たっていうか、なぜかちょっと救われた気がした。

 

この全員復活がなかったら、ほんとにもう救いがなかったところだったけど、全員復活してくれたおかげで「ああ、よかった、このお話は、私たちに何かを訴えかけるためのストーリーだったんだ。この人たちはストーリー上死んで、私たちにいろいろ考えさせてくれたけど、実は残ったのは死体ではなく、私の心の中にあるこの衝撃だけだったんだ。。」って思えたのよね。大団円っていうわけじゃないけど、なんだか、すがすがしい気分になった。(逆にいうとトッドが死んで終わった映画は、この救いがなかったんだよね。。)

 

●まとめ

 

というわけで、本当にすばらしい作品でした。ウィーンに来た時に上演していたら、ぜひ、ぜひ見てみてください。映画がいまいち受け入れられなかった人も、舞台なら全然違う印象のはず。

 

楽しく見れる作品ではないですが、演出と歌と演技のレベルの高さに茫然とさせられます。私は今年見た作品では三本指に入る作品だと思ってるので、またリピート決定です!しかし、精神的には結構余裕のある時に見に行かないとなあ。。

 

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