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2013-09-06 00:00 | カテゴリ:劇場紹介

ウィーンの劇場のドレスコードシリーズ、第三段は、クロークと深い関連のある劇場法についてです。

 

この劇場法については、いつか一度ちゃんとまとめたいなあと思っていたので、この機会に結構気合い入れて書きました。ウィーン歴史と劇場が深く関わっていると感じたエピソードです。

 

●クロークの決まり

 

「入り口で係員に呼び止められて、全部クロークに預けさせられた」と言う声が、ウィーンで観劇された多くの方から聞かれます。

 

ウィーンの劇場では、ハンドバッグ以外のカバンと着ていない服はすべてクロークに預けるのが決まりとなっています。

 

確かに、日本の観劇に慣れていると、ウィーンでの荷物預かりの基準は厳しすぎる気がしますが、これはれっきとした「劇場法」で定められていますので、係員の指示に従わないと、法律違反になってしまいます。(この劇場法については、詳しく後述します)

 

正確にいうと、書類カバンサイズのバッグ1個まで持ち込み可能ですが、リュックサックや、買い物袋、紙袋などは預けることになります。また、コートだけでなく、スーツのジャケットや薄手のカーデガンなども、入場時に着てないものは全てクローク行きです。(上記の書類カバンサイズのバッグに入れば持ち込み可です。)

 

なお、クローク(ドイツ語でGarderobeガーデローベ)は、前払い(預けるときにお金を払う)と後払い(受け取るときにお金を払う)ものがありますが、劇場では前払いが圧倒的に多いです。(舞踏会では後払いが多い気がします。たぶん劇場ではみんなバラバラにやってきて同じ時間に帰りますが、舞踏会は帰る時間がバラバラだから、人が集中しないタイミングで支払いとなっているんだと思います)

 

劇場のクロークは有料のことが多いですが、クロークのどこかに値段が書いてあります。この表示価格は一人当たりの値段なので、複数個預けても同じ値段です。預けてお金を払うと、預け入れた個数の半券を切ってもらえます。

 

コートを受け取るときは、クロークでこの半券をチラチラさせていると、そのうち係員が来てくれます。閉演後は混みますので、少し時間がかかります。幕間に買ったグッズなどを途中から預けても大丈夫です。

 

クロークにチップを渡すかどうかは、微妙な問題です。クロークではチップを渡さないオーストリア人も半分くらいはいると思いますので、これは好き好きです。

 

チップを含めてキリのいいユーロを渡すのがツウ。1.8ユーロだったら2ユーロ渡して、ダンケ!と言うと、向こうもお釣りを渡さないことが多いです。クロークの値段設定自体が、このチップを見越して中途半端な価格になっていることも多いですね。

 

値段が中途半端だったら切り上げてチップを渡し、値段がきっちり1.5ユーロとか2ユーロとかだと、チップを取る意思がないと判断してチップをあげない、という感じで判断するのが普通だと思います。プログラムも同じルールで、チップをあげたりあげなかったりします。

 

 

あと、知っておくと少しお得なのが、立ち見席のクローク。これは多くの劇場で、立ち見割引があり、ライムント劇場では、チケットを見せて「立ち見です」って言ったらクロークが半額になります。(オペラ座の立ち見のクロークは無料だったような。。少し前の記憶ですが。。)

 

また、一部の劇場のボックス席は、内部にコートかけがあるので、クロークを利用する必要はありません。ライムント劇場はほとんどボックス席ないですね。。

 

Ronacherにはボックス席ありますが、コートかけはなかったかように記憶しています。オペラ座のボックス席は素敵なコートかけ室がありますので、とっても便利です。

 

IMG_4330

オペラ座のボックス席


●劇場法

 

さて、日本よりよっぽど厳しいクロークの仕組みですが、劇場法の由来を聞くと、ウィーン人がクロークに神経質になっている理由もわかってもらえるかと思います。

 

なんと、ウィーンでは、クロークに荷物を預けなかったことが原因で、劇場内が大火事になり、何百人もの人が亡くなったことがあるんです。

 

この火事は本当に痛ましい事件で、未だに劇場関係者などからも「この悲劇を繰り返さないために」みたいな話は出てきます。

 

この焼け落ちた劇場は「リンク劇場」と言い、旧市街のリンク大通りに面したSchottenring 7(現警察本部)という街中にありました。こんなところで大火事があったなんて、と身の毛がよだつほどの市街地です。

 

皇帝フランツヨーゼフの治世下の1881年12月8日、芝居が始まる直前に楽屋裏から出た火は、たちまち客席に燃え広がり、30分から1時間ほどの間に384人の観客や舞台関係者が、劇場に閉じ込められたまま亡くなりました。その中には、マリー・ヴェッツェラの弟のLadislaus Vetseraも含まれていました。

 

この短時間でこれほど被害が広がってしまった理由は、劇場の構造にありました。まず、防火扉がなかったため、舞台裏での発火が幕や緞帳に燃え移った後、すぐに客席に届いてしまいました。

 

また、冬だったため、観客はみなコートを脱いで足元に置いていた上、椅子の腰掛部分が跳ね上げ式ではなかったため、ただでさえ狭い通路が、コートでふさがれてしまい、逃げ出すことができませんでした。おまけにコートにも火が燃え移り、まさに火に油を注いだ状況が作られました。

 

そのうえ、劇場の扉が内開きだったため、中からパニックになって逃げようとした観客が、ドアを押しても押しても開かない(それも、みんな逃げようとするので、ドアを引ける状況ではない)という状況になり、みな閉じ込められてしまったのです。

 

私がこの火事のひどさを実感したのは、ウィーンの「時計博物館」の展示で、このリンク劇場の火事跡で発見された、黒焦げになった立派な懐中時計を見た時です。もし機会があったら、この話を思い出しながら、この時計を見てみてください。火事の惨状が想像できるかと思います。

 

この火事の直後、オーストリアでは劇場法が改正され、今でもこの法律が使われています。

 

この劇場法では、防火扉を設置すること(閉演後にビービーと言って閉まるあれです)、毎公演警察と消防が劇場に詰めていること(警察は舞台上にいるようです。消防は客席に専用の席があって、消防士のパパが娘と一緒に座ってることもあります)、扉は外開きにすること、椅子は座席部分を跳ね上げ式にすること(だからRonacherの椅子はあんな安っぽい感じになってしまったんです。。)、などの他に、コートなど通行の妨げになるものは劇場内の持ち込まず、全てクロークに預ける、という規則が出来上がり、神経質に守られているのです。

 

という、長い歴史があり、ウィーンはほかの都市より火事に敏感になっています。ウィーンの劇場で係員がクロークに預けるように口酸っぱく言うのも、こういう経験があるからなんです。

(次回、ドレスコードシリーズ最終回は、オペラ座のドレスコードです)

 

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