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2013-08-21 00:21 | カテゴリ:ミュージカル系雑談

ショップのお客様から、キャストの出演情報について質問がありましたので、お返事を書くついでに、ウィーンミュージカルのキャストシステムについてまとめてみました。

 

日本のミュージカルとは異なる、多少複雑なキャストシステムとなっていますので、専門用語の解説も加えつつ、ファーストキャストとセカンドキャストの違い、出演頻度、急な病気やけがなどの対応などについてもまとめています。

 

○キャストの日程表はあるのでしょうか?


ウィーンミュージカルでは、キャストの出演予定表は発表されておりません。

 

基本的には、8割程度の日程でファーストキャストが演じますが、ファーストの休演日にはセカンドキャストが演じます。(ファーストキャストは、週1,2日休みを取ることが多いようですが、まれに長期休暇で一か月に2,3日しかファーストキャストが演じない、ということもあります)

 

通常の公演日ですと、主要な役(=ソロ曲のある役)のうち2,3人は必ずセカンドキャストが入りますが、例えば、エリザベート、トート、ルキーニの三人の超主要人物全員がセカンドということはほとんどありません。うまくいけば全員ファースト、通常二人がファーストで一人がセカンドと言ったバランスになっています。

 

○ファーストキャストについて

 

ファーストキャストは、初日や千秋楽などの大きなイベントの日に全員揃って出演するほか、ポスターやプログラム、キャストアルバムなどのプロモーション材料の「顔」として登場し、作品やプロダクション全体を盛り上げます。

 

全ての主要な役がファーストの日は非常に稀です。初日と千秋楽以外は確実に全員ファーストの日を前もって知ることはできません。


○セカンドキャストについて

 

セカンドキャストとは、通常アンサンブルにいて、ファーストキャストの休演日(もともと決まっている休暇や、急な病欠、当日のけがなど)には、主要な役を演じます。

 

例えば、普段アンサンブルのヘレネ役をやっているJannekeは、エリザベートのセカンドキャスト(カバー)なので、Anneimekeが出演しない日はシシィ役を演じます。

 

また、セカンドキャストのレベルも非常に高いですので、ファーストキャストで満足できず、セカンドのほうが気に入ったという場合も非常によくあります。

 

また、私の経験から言って、金土曜日の公演は、ファーストキャストに当たる確率が少し高くなる気がします(チケット代が高いからでしょうか。。)

 

また、ロングラン公演が始まって初期はファースト率が高く、2か月ほどしてセカンドが育って来てから少しずつセカンド率が上がってくる傾向にあります。ロングラン終盤になればなるほど、セカンドがファースト張りに頑張って、出演回数、実力ともにファーストを超えることもあります。

 

なお、ウィーンミュージカル界では、セカンドキャスト(2. Besetzung)という表現が通常使われていますが、エリザベート再々演版のプログラムからは、カバー(Cover)という表現が使われています。また、アンダースタディという表現が使われることもあります。


○スウィングについて

 

通常、セカンドキャストはアンサンブルを演じていて、ファーストの休演日に、主要人物役を演じますが、そのセカンドキャストが通常演じているアンサンブルの役は、スウィングと呼ばれる、アンサンブルのアンダースタディが演じます。

 

セカンドキャストは、自分が通常演じるアンサンブルの役と、時折演じる主要人物の役を稽古しますが、スウィングは、ほとんどすべてのアンサンブルをこなすことができる、万能アンサンブルです。キャストが病気などで急に出演できなくなっても、いつでも代役が務まるように、常に4人ほどスタンバイしています。

 

上演中でも、キャストの急なトラブルが発生すると、セカンドキャストが急遽主要人物役のメイクと衣装を着けて飛び入り、スウィングがそのアンサンブルのを埋めるといった状況が生じます。

 

○アルタニーレンドについて

 

アルタニーレンドとは、セカンドが格上げされたもので、セカンドキャストがファーストキャストの休暇や病欠をカバーするために公演日の2,3割の割合で出演するのに対し、アルタニーレンドはほぼ半分の日程をこなします。

 

また、セカンドは通常自分の本役のアンサンブルを演じていますが、アルタニーレンドはアンサンブルでは出演せず、自分が本役を演じるときのみ出勤します。

 

最近の公演でアルタニーレンドはあまり見かけませんが、エリザベート再演時のRob Fowlerはマテ・カマラスのアルタニーレンドで、公演後期はほぼ半分の割合で出演していました。

 

また、最近では、ゾフィーなどの大御所の役をアルタニーレンドで交互に演じることもあります。

 

○ウォーク・イン・カバー

 

今までのウィーンミュージカルではあまり使われなかった表現ですが、今回の「エリザベート」ではOliver Arnoがトート役のウォーク・イン・カバーとなっています。

 

ウォーク・イン・カバーとは、カバー(セカンドキャスト)の重役版と言った感じで、セカンドキャストが通常アンサンブル、非常時の主要人物なのに対し、ウォーク・イン・カバーはアンサンブルの役が付いていず、自分が主要な役を演じるときだけ劇場に「出勤」します(文字通り、出演日だけ劇場にWalk Inするイメージです)。

 

ただ、Oliver Arnoは例外的に、ルドルフのファーストキャストでもありますので、ルドルフの出演日と、自分が出演するトートの日には劇場に足を運び、それ以外の日にアンサンブルとして出演することはない、という感じのスケジュールとなります。(ルカスが入ったらどうなるかちょっとわかりませんが。。)

 

○特定の出演者を見たい時は

 

基本的には、キャストの出演日は発表されていませんが、数か月前から内部では決まっていますので、出演日を知るのにもっとも確実なのは、キャスト本人に聞くことです。(本人も覚えていないことも多いですが。。(笑))

 

役者さんがウェブサイトを持っている場合、そのサイトに出演情報が記載されることも多くありますので、調べてみるのが、次に確実な方法となります。(多くの場合、出演「しない」日程が、それもドイツ語で書かれていますので、ご注意を!)

 

ただ、私の経験から言って、サイトに記載された日程以外に休演日があったり、出演予定が変更になったのに、ウェブサイトは更新し忘れているなどということがよくあり、この情報も7,8割方正しくあとは状況によって変わる、と考えておいた方がよさそうです。

 

○ウィーンのキャストシステムの利点

 

このキャストシステムで優れているのは、けがや病気によるキャストの急な変更にスムーズに対応できるということです。主要な役を演じる役者だけでなく、アンサンブルも安心して病気やけがの時はゆっくり休むことができます。

 

また、ソロ曲が多くのどや体に負担が多い役でも、週一回の休演日以外にも毎週1,2日お休みを取ることができるため、役者の体調にも気を配ったシステムとなっています。

 

また、セカンドキャストのレベルが、ファーストと遜色ないほど高いので、セカンドキャストが育ちやすく、才能ある若手が大きな舞台で早くから活躍でき、才能をアピールする機会に恵まれるという利点もあります。

 

観客も、キャストより作品を見に来ている人が大多数のため、10人のソロ曲を歌うキャストのうち、2,3人セカンドキャストが混じっていても、特に残念さを感じることはほとんどありません。

 

逆にキャストにこだわるほどのファンは、立ち見などの安いチケットがあることもあり、リピートすることで気に入ったキャストの日を狙って観劇しますので、こちらの需要も十分満たしています。

 

稀に、有名人を起用して客寄せすることがありますが(今回のルカス・ぺルマンのルドルフ起用のように)、この場合のリスクは、ルカスが出演しない日に、作品よりキャスト目当てという、ウィーンでは珍しいタイプの観客が劇場に来てしまうと、当日キャスト表を見てがっかり、なんてこともあり得ます。

 

そのため、ウィーンミュージカルでは、あまり有名人による客寄せはよしとされて来ませんでしたし、今後も避けられる傾向にあるかと思います。(ここでの有名人とは、ミュージカル界の有名役者というより、テレビなどによく出て、一般人が誰が聞いても知っているレベルの役者です。ウーヴェ・クレーガーはこの部類に入りますが、「ウーヴェファンだからレベッカを見に来る」というお客さんはあまりいなかったので、少しルカスとは違うファンのつき方をしているようです。)

 

○ウィーンのキャストシステムまとめ

 

というわけで、私がウィーンミュージカルを観察していて気が付いた、キャストシステムについてまとめてみました。こういうシステムは時代によって少しずつ変わっていきますので、私の認識が古かったり、時代遅れなことも書いてしまったかもしれませんが、日本からウィーンミュージカルを見に来られる皆さんの参考になれば、と思って、書いてみました。

 

ウィーンのキャストシステムは、一見複雑に見えるシステムですが、長年の劇場文化の中で育まれたシステムは非常に合理的で、観客に最高の舞台を届けられる、非常に優れた仕組みとなっています。

 

このような複雑なシステムに欠かせないのが、層の厚い実力ある若手です。ウィーンは幸いなことに、ミュージカル役者の層が信じられないほど厚く、無名役者でも驚くほどの実力を備えていることがよくあります。そんな「音楽の都」だからこそできる贅沢なシステムなのかもしれません。

 

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次回は、エリザベート主要キャストの2013年の出演情報についてまとめてみます。

 


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