2013-02-24 08:37 | カテゴリ:その他ウィーンミュージカルレポ
●キャスト編

・オペラ座の怪人@Christian Alexander Mueller

この人、ドイツでは有名かもしれないんですが、ウィーンでは初めて。確か、Mark SeibertとかJan Ammanとかと組んでMusical TenorsというCD出してたメンバーだよね?

正直、怪人役は初演のGoebel様で見たかったので(彼のMusic of the Nightはねちねちセクシー全開で病み付きになる!!)、キャスト発表では誰これ?状態。名前も長くて省略のしようがないので、C.A.Muellerと呼んでおきます。彼の正式略称知ってる人いたら教えてくださいー。

と、前置きが長かった上、全く期待してなかったんですが、このC.A. Muellerすばらしかったよ!!いやあ、Jan Ammanといい、Mark Seibertといい、C.A.Muellerといい、最近よくウィーンに来るねえw。それも、JanやMarkはドイツではやりそうだけどウィーンではどうかな。。という雰囲気(ルックスが甘すぎたり(爆)、歌がパワフル押せ押せ過ぎたり、上から目線だったりw)なのに対して、CAMuellerは、ウィーンでも受けそうな繊細さを持ち合わせてる気がする。

歌も完璧に素晴らしかったけど、なんといっても演技が!!!狂気すぎる!!!!

この作品は、私は原作も、スーザンケイのファントムも読んで、それなりに怪人(エリック)に感情移入してるわけなんですが、そのわりにミュージカル版では私の見たい側面が表現されてなくて、妙に恋愛が全面に出てきてるのが好みじゃないと思ってたんだけど、この怪人は、私が見たどのバージョン(四季数回、ロンドン、ブダペスト、今回のウィーンコン、あと映画も)より、怪人に感情移入できて、すばらしかった!!!

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なんか、よく見る怪人像って、尊大で横柄で天才で、人との関わり方が上から目線で、そんな、顔以外は完璧な人間が、結局顔で拒否されちゃって、悲劇。。みたいな感じなのね(まとめすぎw)。クリスティーヌが最後に「顔じゃなくて心よ」って言うけど、「いや、あんた顔で選んだだろw」って突っ込みたくなるくらいw

それが、今回の怪人は確かに、顔じゃなくて心だった。。それがものすごいかわいそうだった。。

まずコンサートバージョンなので、あえて怪人は仮面なし。この演出が斬新だった!!途中まで気がつかなくて、仮面なくても全く違和感なし。これからはオペラ座の怪人、仮面なしで上演しても全然オッケーじゃん!ってくらい、自然だった。

で、仮面がないぶん、ぞんぶんに顔の演技ができたのがCAMuellerのラッキーだったことかな。私も、顔の見える怪人が初めてで、それもこんなに演技のうまい人で、ほんとラッキーだった!!

まず、彼の怪人は元が狂ってるの。その狂い方がすごいかわいそうで納得できる。。クリスティーヌや他の人の前に姿を表すときは、一見尊大で偉そうに胸を張って人を怖がらせるんだけど、独白で歌うときは打って変わって、ひきつった、何かに怯えるような表情。実は人目にさらされるのが怖い、けれども認めてほしい子供のような望みが全面に出されて、そのギャップが素晴らしい!人前で偉そうにしてるときの表情が「仮面」で、その奥に隠れた独白モードが「素顔」なのねー。

その「素顔」の狂気があまりにリアルで、ストーリーにすごい説得力を産み出してた。誰かに認めてほしい、怯える子供がそのまま大人になったような、そして、大人になって天才となり、精神的に成長していないのに強大な力を手に入れてしまった、悲劇。

もちろん、あの映画で加えられた「サーカスの見世物立った過去」が演技に深みを作っているのもあると思う(前も突っ込んだけど「業火で焼かれた」って行ってるのに、「生まれつき」って言ってるのが矛盾してるよね。。スーザンケイ版では「生まれつき→見世物」説なんだよね。)

見世物でいじめられていた子供の精神状態のままで成長したと考えたら、人前にさらされ、拒否されることに対する恐怖感や、認められることに対する以上な執着なんかは、すごく納得。愛されたいという強い欲望は、親に捨てられた過去とも関係がある。その辺りが、スーザンケイのファントムともうまく繋がってきてるので、私の好きな役作りだわー。

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製作発表の場での2人

で、この狂気の裏付けがあるから、尊大なときもなんだか危うい。他のファントムのように「俺様の言うことを聞けー」って感じじゃなくて、子供っぽい感情に振り回された場当たり的な決断が多く、それに振り回されるオペラ座の皆さんが滑稽に見える。あの手紙が大量に届く辺りとか、狂人がなにかにとりつかれたかのように、関係者全員にご丁寧にも手紙を書いてる様子が目に浮かぶわ。受けとる方もげんなりw)

クリスティーヌに対して当初、音楽の天使を名乗っていたときは、鏡の中の隠れた存在として君臨できてたので、仮面モードで「かっこいい」自分を保つことができたけど、クリスティーヌを地下に招いてしまうことで、逆に素顔をさらしてしまうのよね。怪人がクリスティーヌの惚れてなかったら、こんな風に素顔をさらすこともなく、かっこいい「憧れの人」のままでいれたかもしれなかったのにね。。

で、クリスティーヌからは、子供が母親の愛情を求めるように、愛を求めたんだと思う。そりゃ、まだ本人も子供みたいなクリスティーヌには無理な相談だし、そりゃ、怯えて逃げたりされて当然だと思うけど、その辺怪人はわかってないんだよね。。


クリスティーヌのところのレポで書こうと思ってたけど、どう考えてもこの若輩クリスティーヌには、怪人の思いはよくわからなくて重すぎた。逆に、いいタイミングで登場したイケメンで正体も明らかな上、幼馴染のラウルは、そりゃあ、若い彼女にはちょうどよかったんでしょうねえ。

もしクリスティーヌがもうちょっと大人びてたら、怪人の、実力に裏打ちされた俺様についてこい!的な男らしいところに惚れて、「私が癒してあげる♪」なんて思ったかもしれないけど、この純真クリスティーヌじゃ、怪人を好きになる器じゃないわ。。

そして、クリスティーヌははラウルが頼れるやつだと思って、色々と悩みを打ち明ける。ラウルは恋人ができてウキウキして、All I ask of youとか言って安請け合いするけど、実は仕事もしてないボンボンwだから、彼女のキャリアの悩みがよくわからなくて、空回りで頑張っちゃう(オペラ座の警備を指揮するとか、どんなおぼっちゃまw)。

クリスティーヌの悩みは、今で言えば、バリバリキャリアウーマンの悩み。パリのオペラ座の主役にいきなり選ばれ、お局カルロッタにはいじめられ、上司である支配人たちも煮えきらないし、そのくせ先生(マダムジリイ)はやたら応援してくる。尊敬してついていっていた歌の大先生は、実は敵で怪人だったことがわかるし、その怪人が自分の平和だった職場を、自分を使って荒らしまくってるし。こんな複雑な悩み、ぼんぼんのラウルに理解できるわけないよー。

で、あまちゃんのラウルが実はあまり当てにならないことに気がついたクリスティーヌは、墓場のシーンで頼る相手がいなくてパパに相談する。せっかくの静かな時も、なぜかストーカーしてきた怪人とラウルに邪魔される。めちゃくちゃやん。。

けど、結局クリスティーヌはThe point of no returnで覚悟を決める。彼女は、ラウルに頼らず、自分でなんとかすると決めることで大人になり、怪人の魅力に気がつく(同時に大きな欠点も見つけるわけだけど)。

クリスティーヌが怪人を選んだのは、自分の若さで気がつかなかった怪人の魅力を発見したからで、「歪んでいるのは顔じゃなくて心よ」っていったのは、成長したクリスティーヌが、今まで「なんか怖い人」だった怪人の、大きな欠点(孤独の中の狂気)に気がついてしまったから。

怪人はクリスティーヌが自分の真の姿を見抜いたとわかり、本当に自分が求めるべきだったのは、母親がわりに愛してくれる人ではなく、自分を理解してくれる他人の存在だったことを理解する。

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この表情!!!

怪人はクリスティーヌに拒否されたわけじゃなくて、クリスティーヌに理解され、キスによって受け入れられたので、怪人はそれ以上をクリスティーヌから要求せず(本当に望むのはのはクリスティーヌを独占することではなく、彼女に理解してもらうだけで十分だとことがよくわかったから)、彼らを行かせる。

怪人は彼女のお陰で呪縛から解かれ、清々しい誇り高い表情で「この愛はおわりぬ♪」と歌う。振られたわけではなく、「必要がないから終わった」恋愛だった。怪人は自分の狂気から解放され、ある意味ハッピーエンドで仮面を残して消える。

こう解釈すると、このストーリーって、かわいそうなお話じゃないんだよね。。ぼんぼん(ラウル)と大人の男(怪人)の間で揺れ動くクリスティーヌの成長の物語と、クリスティーヌによる怪人の魂の救済の物語が平行して絡み合い進行していくわけで、恋愛は二次的な要素になってくるのね。それなら、私にも納得!

と、長く解釈を語ってしまったけど、こういう解釈を産み出す手助けを大いにしてくれたのがCAMUellerの怪人。その演技の絶妙さといったら!仮面がなかったのは彼にとって有利だったけど(斜めからにらむように語りかける、ひきつった表情が忘れられない!あと、拒否されたら子供のようにうちひしがれ、相手を出し抜いたら子供のように偉そうになる)、もし仮面を被ってたとしても、体の演技だけでも十分に表現できていたと思う。少し体がひきつったように胸を無理矢理張った尊大で傲慢な姿(音楽の天使、手紙、マスカレード、墓場)や、それとは対照的に背中を丸めて、殴られるのに必死で抵抗するように怯えきる姿(独白の歌の大半)、急に激昂して異様にキレキレになる姿(仮面をはがされたときは、人間とは思えないくらいキレキレで、見てる方が怖いくらいだった)など、表情がなくても十分にこの演技は表現できてたと思う。

という、狂気にみち満ちたこのCAMueller。演技を見るだけでも一瞬一瞬が新鮮で、おもしろくておもしろくて仕方なかったんですが、それに加えて歌がもう素晴らしい!!!

なんという表情のある魅力的な歌声!この体や顔の演技が、声にも乗り移ってくるのが、鳥肌もの。。もちろん、歌がうまいとか、そういうレベルを越えてます。

Music of the Nightの緊張感も半端ない!!!今までは、ウィーン初演のAlexander Goebel様のMusic of the Nightが史上最高だと思ってたけど、今回も優劣つけがたい!!このねちねち感!!Goebel様はセクシーだけど、CAMuellerは哀しみとか支配欲が透けて見えるんだよね。

オーケストラが素晴らしかったのもあるけど、客席が彼の歌声と表情に支配されて、好きなように操られていたという印象。これぞ、私が想像していた「怪人の歌声」なのよ!!!音楽で支配して、体と心のコントロールを奪ってしまうの!!もう、音楽に身を任せて、ふわーんふわーんと浮かばされているような感覚!!本を読みながら想像していた感覚を、実際に体験できるなんて!

(他のキャストのキャスト編に続きます)


ウィーン版オペラ座の怪人。Goebelさまのファントムはセクシーで聴き応えあり!



ドイツ語吹き替え「オペラ座の怪人」サウンドトラック。あのUweがオペラ座の怪人を歌っています!



ミュージカル・テナーズ。今回のファントム役Christian Alexander MuellerがMusic of the Nightを歌ってるCDです。マーク・ザイベルト、パトリック・シュタンケ、ヤン・アンマンと売れっ子ミュージカルスターの競演CDで、他にも聞き所いっぱい!



ルドルフウィーン版全曲ライブCD。今回クリスティーヌだったLisa Antoniがマリーヴェッツェラ


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