2012-10-06 08:26 | カテゴリ:その他ウィーンミュージカルレポ
今年はクリムト生誕150周年を記念して、クリムト関連のイベントがたくさん開かれていますが、このミュージカル「グスタフ・クリムト」もその一環。2008年くらいに夏のミュージカルとしてGutensteinという田舎で初演された作品を、この機会にウィーンで再演した作品です。



主演はエリザベート再演版&来日版のフランツ・ヨーゼフ役で有名なアンドレ・バウアー。名前が売れている割に、主演レベルは珍しい。美声で歌がうまい割に微妙に影が薄いので、今まで大役には恵まれませんでしたが、今回はあまりにクリムトにそっくりなので(笑)、はまり役といえるでしょう。



アンドレだけではなく、脇役に非常に魅力的なキャストを集めてきていて、公演期間が短いというのに、見逃すわけには行きません!大好きなLucius WolterやGeord Prohazkaが出てるんです!それも、クリムトの親友と弟役!前半かこの三人がつるんで楽しそうにしてるのを見るだけでもニヤニヤw.

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キャストは魅力的ですが、正直作品としての仕上がりが未知数だったので、ちょっとこわごわ見に行ったわけですが、演出、作曲、衣装とどれも素晴らしく、質を疑ってしまったのが申し訳ないくらい!もっとロングランや再演があればいいのにー、と思いました。また見てみたい!

●会場編

会場はKuensterhaus。有名な楽友会館のおとなりの建物です。こんなところに劇場があるなんて知りませんでしたが、入り口は建物のサイドで、実際会場は劇場というより大きな講義室と言った雰囲気。椅子も据付のものではないし、舞台も簡素なもの。しかし、入場してから劇場に入るまでの2つのホールにはクリムトのレプリカが展示即売されており、否が応でも気分が高まります。

会場の様子。美術館のよう!

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元々劇場ではない関係で、この作品の唯一の難点は音響。まあ、少ししたら慣れましたが、さすがにかなりぐわんぐわん響き、多少耳障りだったのが残念です。せっかくいい作品だし、キャストもすばらしいんだから、ちゃんとした劇場で再演してくれたらまた見に行くのになーと思った所以です。

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講義室みたいな会場

この作品のCDとDVDが出てるのはずっと前から知ってたんですが、なにせどんな作品か未知数だったので、まだ持ってませんでした。しかし、もう幕間でどっちも買ってしまったよ!いやあ、ミュージカル舞台のDVDは苦手な私が、DVD買うなんて。。けど、演出も衣装もすばらしかったし、史実をうまくまとめてあったので、後から見ても発見があるかな、と思ったのと、再演されなくてDVD買わなかったら後悔するかな、と思ったので。。

あと、この作品はウィーン版から水曜日は英語公演(歌はドイツ語)になってます。英語公演見てみたかったんだけど、見事に水曜だけ売り切れ。。ドイツ語の日は残席ありまくりなのに。。もっと英語公演増やしたらよかったのにねー。

●あらすじ

グスタフ・クリムトと弟のエルンスト(Prohazkaさんがひょろっと素敵♪)と親友のマッチュ(無精ひげのLucius Wolter♪)は画家仲間として共同制作し、ブルク劇場の天井画などで成功を収めます。クリムトは女たらしで、モデルのミッツィ他多くの女性と浮名を流します。弟エルンストの婚約者の妹エミリエ・フレーゲとも恋に落ちますが、クリムトの女ったらしっぷり(ミッツィとの間には隠し子も)が原因で、二人はかたくなに友人関係を保ちます。エルンストは急病で死に、混乱の中親友マッチュとも袂を分かつクリムト。敵だったコロ・モーザーと手を組んで、「新しい芸術」の基礎を築こうとします。これが後のセセッシオン派。

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敵を手を組んで、セセッシオン派を創立!

ウィーン大学の天井画を依頼されたクリムトとマッチュ。すでにキャリアや画風では反対方向を行っていた関係で、この契約は荒れます。古典的な画風のマッチュの絵は受け入れられますが、クリムトの絵は大学から拒否され、怒ったクリムトは絵を買い戻すハメになります(有力パトロンがお金を出してくれて買い戻せる)。ウィーンでは評価が割れていたクリムトですが、パリの万博で「哲学」が賞を取り、キャリア的には最高潮に。

その合間にはアッター湖でエミリエとの愛を確認しますが、それもすぐに終わります。

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アッター湖のシーン。私も毎年夏はアッター湖で過ごしますし、今年はクリムトの足跡をたどってみたので、かなり思いいれのあるシーンです。

クリムトは愛に生きるより、芸術に生きるのを選び、次々と名作を生み出していきます。ベートーベンフリースは今や教授となったマッチュも感動させますが、結局二人の仲は戻りません。取り憑かれたかのように絵を書き続けるクリムト。とうとう最期がやってきます。エミリエがやってきて、あの有名は「キス」の絵が舞台上でそのままに再現され、幕。

このストーリーに、「Genius」(芸術的才能)が擬人化されたダンサーが登場し、クリムトのキャリアと才能を支えます。彼女はクリムトが愛に生きることに否定的で、自分(芸術)の方を向いていると喜びます。エミリエとクリムトが最後まで深く愛しあうに至らなかったのは、この「才能」が邪魔したから、という解釈。芸術が彼をかきたて、どんどん作品を作らせたが、彼はその分「愛」を犠牲にしたという構成になっています。

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左の女性がエミリエ、右がGenius。愛を捨て芸術に生きるクリムト。

このGeniusがなかなかいい!クリムト的デザインの全身タイツで、非常に抽象的なダンスがまたすばらしいのですが、歌もかなりたくさん歌います。感情的で食って掛かるようだったり、クリムトが絵を書いているときは満ち足りた感じだったり、とても表情豊か。クリムトが時には毛嫌いし、時には振り回され、時には親しくしているのが、非常にわかりやすく表現されています。

私は、エミリエはクリムトの生涯の愛人だと思ってたんだけど、実は弟の妻の妹という身内で、友人関係を保っていた時期が長かったのねー。アッター湖の一時が彼女との愛を感じた数少ない時だったのかも。それでも、二人の関係はプラトニックだったという説もあり、「愛人」という表現は適切ではないかも。

彼女は自分の衣装デザインアトリエを持ち、自立したキャリアウーマンだった。それに、ただでさえ隠し子がいて女たらしなクリムトを本気で愛してしまうと後悔するってわかってて、好きだったけど彼女のほうから距離を取っていた模様。(ちょっと史実まで調べられてないので、この作品がどこまで史実どおりなのかわからないけど、雰囲気からしてちゃんと再現してるっぽかった。ムダにロマンチックにしてなかったし)

あと、ミュージカルの王道として、喧嘩別れした昔の親友とは最後に仲直りして、途中でキャリアや金のために敵と手を組んだら失敗して後悔するのが定番かと思いきや、この作品では途中で敵と手を組んだ方が大成功、昔の親友とは結局仲直りせず、という、現実的なストーリー。こういうのもありかな。

なにせ、人生で一番好きな女性(エミリエ)とも距離を取った関係しか築けず、隠し子までいる女性からも愛想を付かされ、芸術家として大成すればするほど私生活がわびしくなっていく感じ。それがこの「芸術的才能」の擬人化でよく表現できていたと思う。

ストーリー(脚本)はなかなかミュージカルの王道のパターンでよくできていたと思う。明るいシーンと暗いシーンを交互に交えて飽きさせなかったし、ともすればブツ切れになりがちなお話も、ブツ切れながらGeniusのおかげでなんかちゃんとつながってたし。

ただ、ラスト(アッター湖以後)、クリムトがエミリエとの愛を諦めて、Gineusにしたがってどんどん作品を生み出すところが1場面にものすごい沢山の内容が込められていて、話の流れが追えなくなるくらいのスピードだった。

多分20年くらい?を1場面で猛スピードで展開して、クリムトの周りで人物がぐるぐる回りながらきめ台詞を一言二言話し、作品が映像で映し出されなが周りを回って、私生活のわびしさ(隠し子がいきなり大人になっててびびったw)と多作さ(アデーレとか有名な絵の説明もないし)を表現してる。もしやこのシーンは、エリザベート的に言ったら「悪夢」のシーンに匹敵するのか?

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こんな風に絵が写された紗幕の後ろで人がぐるぐる

そして、「うわー。ラスト周辺になってなんだこの情報量はー!」って思ってたら、最後のシーンは急に死にかけてるし。この話は死ぬ時は唐突だなあ(弟も)。で、エミリエがやってきて、最後は有名な「キス」の絵を再現したすばらしい演出!なんか、結ばれない二人のキスで終わるっていうのもエリザっぽいなあ。

そういえば、この作品でクリムトが「自由を追いかけるのに忙しく、自由に生きることができなかった」っていうせりふがあって、はっとしたなあ。



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