FC2ブログ
2012-06-17 06:15 | カテゴリ:オペラ
突然チケットをいただいて、久々にオペラに行ってきました。ミュージカルでも見たいのが山ほどあるんですが、Elina Garanca(エリーナ・ガランチャ)初めてなのよー。

作品はモーツァルトの晩年のオペラ「皇帝ティトーの慈悲」La Clemenza di Tito。内容見る限り、歴史ものじゃなくてどちらかというと愛と嫉妬の泥沼系(笑)。

演出は現代演出で、ストーリーも泥沼なので、ガランチャ以外はあまり期待せず行ったんですが、すばらしかった!!!!!

歌手もよかったけど、一番気に入ったのは、演出!!!!もう、私の好みドンぴしゃで、現代演出でも、こんな演出なら大歓迎!もう絶対この演出家お気に入りリストに加えるぞ!

●あらすじ

ティトーはポンペイの地震の頃のローマ皇帝。被災者救済に奔走した、慈悲深いことで有名な皇帝。

モーツァルトはこの作品をオーストリア皇帝レオポルド1世の即位に捧げたらしいんですが、説教臭いほど、もろ「慈悲深い皇帝であれ」というメッセージ。こんなの皇帝が見たら、微妙な気持ちだろうなあw

ストーリーは、ティトーVS政敵ヴィッテリアにに巻き込まれた、ティトーの親友でヴィッテリアに惚れてるセストの悩み。ヴィッテリアは父に渡るはずだった皇位についているティトーを嫉妬し、自分がティトーと結婚して皇后になろうとするが、ティトーは別の人と結婚予定で、さらに嫉妬。ティトーをやっつけてやる!とクーデターを起こし、自分に惚れているセストを傀儡の首謀者にさせます。

セストは悩みますが、クーデターでティトーを暗殺。しかし、2幕に入って、ティトーは生き延びたことがわかります。ティトーは親友が反逆罪を犯したことを知り苦しみます。本人を前に、友人として話を聞こうとしますが、セストは愛するヴィッテリアをかばって、真の首謀者を隠します。彼の死刑執行所にサインがされ、議会での尋問が始まります。セストの妹とその恋人がヴィッテリアに真実を話すよう説得に行き、セストの尋問の場でヴィッテリアはとうとう、首謀者が自分であることを告白します。ティトーは二人を許し、ローマ帝国は慈悲による支配が続きます。


●キャスト編

・セスト

La_Clemenza_di_Tito_36363_BANSE_GARANCA.jpg
ラブラブのセストとヴィッテリア

タイトルロールはティトーですが、主役は悩めるいい男、セストみたいなもんです。おまけに、主要キャストは女二人男四人の合計6人ながら、男二人はズボン役(元々セストはカストラート、セストの妹の恋人アンニオはズボン役)。半分宝塚の世界です。

おまけに、ふつうオペラのズボン役は明らかに不自然な男装が多いんですが、ガランチャのセスト役はあまりにかっこよすぎて、まさに宝塚!もう、男前すぎて惚れそうww。ガランチャって元々かっこいいしゅっとした顔だし、手足の動きもまさに男!ラブシーンも遠慮なしに女に触る触るww

最初は、誰が何役かわからないかなあ、と思ってたんですが、明らかに飛び抜けて歌がうまいので、一瞬でこの男前さんがガランチャだとわかってしまうわー。男がソプラノ歌ってるのに、なんて男前なんだ。。

そして、もちろん歌がすばらしい!結構たくさんかっこいい聞かせどころのソロがあって、どれも歌が飛び抜けてすばらしい。それに演技がいい!曲の途中で決心したり気分を変えたりするのがわかりやすくて、私の好みの「歌いながらの演技」がきっちりできてる。特に、惚れてるヴィッテリアから、親友のティトーを裏切るクーデターの首謀者になるよう頼まれ、親友か好きな人かを選ばなくてはならなくて悩んで、結局好きな人の願いを聞いてやって「わかったよ!俺は裏切り者だ!」って開き直るところが迫力!!

そのあとで、クーデターのシーンは演出もいいんだけど、壁の方から黒いジャケットの黒いパーカーをかぶったまま、舞台奥から刺客を刺しながらやってくるところとか、宝塚男役顔負けのクールなかっこよさ!

あともう一曲、前半ですばらしい気持ちのこもったソロがあったなあ。結構しっかり長い聞かせどころのソロが3、4曲あって、ガランチャの歌声と演技と男前っぷりを楽しむのには最高の舞台でした。

・ティトー

La_Clemenza_di_Tito_36819_SCHADE.jpg

アツイ皇帝!

このMichael Schadeという人、今まで何度か舞台で見て、名前が変わってるし(Schadeって、いじめられそうな名字だけどいいのかな。。)、歌がうまいのに端役なので覚えてたんだった。

この人も演技がすごくいい!!親友に裏切られて暗殺されそうになって、起こって悩む様子、けど、元は慈悲深い皇帝だから、親友を許すべきか悩む演技。で、結局親友が裏切った本当の理由を黙っているので、話すように説得しようとするけど、結局打ち明けてもらえず、再び怒る様子。あと、「慈悲の心」の象徴の美しい女性に抱きつかれて悩む様子。あー。演出もすばらしいけど、それにしっかりついて行ってる演技もすばらしいー。ほんと、熱血熱いいいヤツ皇帝と、親友に裏切られて悩む姿のギャップがよかったよー。

・ヴィッテリア

ガランチャ@セストとのデュエットとかがあると、さすがにかすんじゃうんですが(声量からして違う)、悪女の演技もすばらしいし、歌はガランチャと比べなければとてもよかった。後半の、自分が黒幕であることを打ち明けるかどうかの悩むところ(アンニオとかに迫られて)もすごくリアル。

・アンニオ

もう一人の男装のアンニオは、ふっくらした人でズボン役丸わかりだったんですが、歌はめちゃうまくて、いい人でよかったです♪ほんと、今回はズボン役が二人とも歌がうまいー。アンニオはセストの親友で、セストの妹とつきあってるんだけど、セストの妹と一緒に、悪女のヴィッテリアに黒幕が自分であることを話さないと、セストが処刑されると説得にいくシーンが、すごくいい。なんか、ストーリーが自然なので、無理がない感じで。

・セストの妹(アンニオの恋人)

この人も歌うまかったー。それに、ほっそりして、黒いドレスがよく似合う。最初はちょっとセクシーすぎる演技&衣装かと思ったけど、ホントはいい人で、アンニオとお似合いでした。

●演出

で、この舞台で何が一番よかったって、ガランチャのセストも、ほかのみなさんの演技も歌もよかったんだけど、一番気に入ったのは演出!!私の好みドンぴしゃで、この演出家今後もチェック!

何がよかったって、何か意味がありそうな小道具やセットは、全部それぞれにちゃんと意味があるってこと。少し考えないと意味が分からないけど、しっかり考えたらちゃんと裏に考えがあるのがすごい!

私がイラっとくる演出は、何か意味があるかのように大がかりにしておいて、結局意味がないっていうやつ。ローエングリンとか!!(爆)とにかく、大がかりで謎名演出で観客を煙に巻いておいて、結局「意味はないんだよね」って言われたら、ほんと、ブーイングもの。最近現代演出ではそんなのばっかりだったので、もうほんと、いい加減にしてほしかったんだけど、今回は違う!

すべての変わった点にちゃんと意味があって、それがストーリーに一致してるの。

まあ、私が演出の意味深さに感動して大喜びしてたけど、一緒に行った人は一つとして意味が読み切れてなかったみたいなので、演出の裏の意味を読みとれるかどうかは、私と演出家との相性もあるかもねー。

というわけで、気に入った演出をリストアップ

・ものすごいスタイルのいいセクシー衣装の通行人

舞台を見てびっくりしたんですが、人間とは思えないくらい美人で足が長くてスタイルのいい女性たちが、舞台上に少なくても10人くらい。どう考えてもオペラ歌手じゃないし、ダンサーでもないし、コーラスでもない。言うなれば、エキストラの通行人的な役割で、大道具とか書き割りを移動したりしてるくらい。

ほとんどの場面で通行人としてたったりしゃべったりしてるんだけど、あまりにスタイルよすぎて美人すぎて、意図的にきれいな人を連れてきたとしか思えないよ!しばらく意味を考えていて思い至ったんだけど、これは、この国が慈悲深い皇帝によって治められているおかげで幸せに、慈悲深く暮らしている一般のローマ市民を大言してるんだろうなー。

あとで、同じ国立オペラ座専属歌手の甲斐さん(本人は稽古を見たらしい)に聞いてみたら、やっぱりプロのモデルさんを雇ってるんだって!そりゃ、人間離れしてるわけだわ。同行者(男)は、モデルさんたちが舞台上にいるときは、私からオペラグラス奪い取って見てたし(笑)。まあ、私も私で男前なガランチャオペラグラスでガン見だったしw

・コーラスと譜面代

コーラスのみなさんは40人くらい(?)いて、見た目は黒い服着たふつうのおじさんおばさんが譜面台持参で登場するんですが、これがまた、演出のおかげでしっかり役割を持ってるわけなんです。

一応、さっき紹介したモデル通行人も一般のローマ人役なんですが、コーラスも同じく普通のローマ人。モデルさんたちが、「幸せなローマ人」を体現してる一方で、コーラスの人たちは「ティトーを支持・賛美するローマ人」的な役割。

譜面台を持って一列に並んで歌うわけなんですが、その手前にティトーが「やあやあみなさん」的な身振りで登場すると、あら不思議、何でもないコーラスのみなさんが、急にティトーを讃美するみなさんに見える!

このコーラス、目立つ出番は三回。最初はティトー登場シーン。先ほど言ったみたいに、ティトー登場を讃美する役割で、「民衆に指示されて行う皇帝」というのがわかりやすくなっています。

二つ目の出番は、2幕クーデターの後。クーデターの後は譜面台があちこちに散らばってひどいことになってるんですが(クーデター後の惨状については後ほど詳しく。。)、これを拾い上げて、譜面をおいて、歌い出す様は、まさに復興のシンボル。ほんと、このクーデター後の復興演出はすばらしい!

LaClemenza_di_Tito.jpg

三つ目の出番は、セストの裁判のシーン。舞台奥にいすが一列に並べられ、上には石のブロックがおいてある。裁判が始まると、コーラスのみなさん(元老員的役割)が石を持って椅子に座り、その後、舞台中程に横一列に並んでいる譜面台のところまで前にやってくる。ヴィッテリアが黒幕であることがわかると、コーラスは石をほっぽりだして退場、という流れ。

ここで、コーラスが石を持ってるのも意味深い。石=セストの処刑に対する賛成票という意味がある。ヴィッテリアが黒幕であることが発覚するとセストは無罪になるので、石は用なしになる、というわけ。

・下記割りの壁が動くだけで部屋の移動

普通はソファーや机と言ったセットを動かすことで、部屋が変わったことを示すけど、この舞台では、ソファーや椅子はベッドの位置はそのままで、書き割りを傾けるだけで場所が変わったように見えるのがすごい。

特に2幕。最初はクーデター後の混乱。それを徐々に片づけて、ティトーの執務室に。(書き割りはティトーの机二壁がある状態。)そこから反対側の書き割りを傾けてソファーにくっつけるだけで、ヴィッテリアの部屋に舞台が移る。大道具全然動かしてないのに、場所移動がわかるよ!

・クーデターの様子(スローで倒れていく通行人)

ヴィッテリアがクーデターを企てる様子が、ヴィッテリアが自室に入ってくる通行人に銃と防弾チョッキを手渡しているのでよくわかるんですが、(最後に傀儡首謀者セストに手渡す)、その後、この上を持った人たちが、例の「幸せなローマ人」であるモデルさんたちを銃で脅しながら、ゆっくりと右に向かって進んでいく。途中でスローモーションで銃殺される3人のモデルさんたち。奥にはグレーの落書きされた壁があり、宝塚スター張りのかっこいいガランチャ(黒いパーカーの帽子をかぶっている)が奥から刺客を返り討ちにしながら手前へ進んでくる。

この動きだけで、クーデターの進行状況がわかるし、民衆の驚きとか、セストの政治的立ち位置もよくわかる。ほんとかっこいい演出!

・クーデターの後片付け

しかし、演出がもっとすばらしかったのはクーデター後。暗殺されたと思っていたティトーが実は生きていて、町を復興していく。

休憩が終わって幕が開いた瞬間、客席からは失笑が漏れるほど、めちゃくちゃカオスにちらかりまくった舞台上。こんなめちゃくちゃな舞台見たことないわ!これから2幕始まるって言うのにどうやって片づけるのさ!って思ってたけど、これがまた効果的に片づけられるんだよねえ。

まずは、男のエキストラが奥のずだ袋の片づけ。次にコーラスのみなさんがやってきて、譜面台と譜面を拾って歌い出す。次に、残りのエキストラが前に散らばっていた椅子をそろえて、床のゴミとかさっさと片づけていく。このエキストラさんたちの半分くらいはモデルさんたちなんだけど、蛍光オレンジの掃除人のベスト着てるwモデルさんたち、何着ても似合うわwー。

この片づけが話が進むにつれて進んでいくので、町の復興が進んでるってよくわかるのねー。

・「慈悲の心」さん

この演出はよかった!ティトーが、親友のセストが裏切って自分を暗殺しようとしてたことがわかり、ショックを受けて歌うんだけど、そんな親友を死刑にするか、許すかで迷うのね。この、怒りと許しが交互にやってくる歌もすばらしかったんだけど、なぜか途中で秘書的に、モデルさんの一人らしき女性が出入りして、ワインを持ってきたりしてるのへ。端から見たら、こんなまじめなシーンで余計な人物が出入りするなー!ってかんじなんだけど、考えてみたら意味があるのー。

この女性、ティトーに抱きついたりしがみついたりして、結構うっとうしいんだけど(それも、ティトーはされるがまま)、抱きつくタイミングがあるの!ティトーが許しの心を抱いたときには抱きついて、ティトーが「やっぱり死刑だ!」って起こって歌うときには離れてるの。

つまり、ティトーが許しの慈悲の優しい心になったときには女性が抱きついてる、ってことは、この女性はティトーの優しさの部分を体現してるんだよね。こうやってみると、すごい意味があっておもしろいー。ちなみに、同行者は意味が分からなくて、この女話に関係ないのにうろちょろしててうっとうしい。。ティトーエロ親父だし。。と思ったらしい。普通そう思うわね。。

・「花嫁」

アンニオと彼女が、ヴィッテリアに自分が黒幕であることを明かし、セストを処刑から救うように説得するシーン。ヴィッテリアは徐々に罪悪感が芽生え、二人が去った後には、自分が真実をあかして、罪をかぶったセストを救うか、このまま黙っていてティトーと結婚するかを悩むシーン。

そんなとき、左側の扉から、花嫁の衣装を着たモデルが二人唐突に登場。これも、意味を考えたら納得!花嫁は、ティトーと結婚した自分の姿を現していて、結局ヴィットリアは真実を明かしてセストを救うことを決め、右の扉から退出します。

・セストの「裏切り者」の紙とかぶりもの

ティトーがセストに本当のことを話すように説得するが、セストはヴィッテリアをかばって、自分が罪をかぶります。ティトーはそんなセストに怒り、セストの体に「裏切り者」「暗殺者」と書いた紙を貼り付け、「裏切り者」と書いた紙の帽子をかぶせます。一見結構笑える演出なんですが、私はこれが結構好きでした。ティトーが「裁く者」として貼り付けたレッテルを、甘んじて受けるセスト、という絵はなかなかみる者があります。

La_Clemenza_di_Tito_36853_GARANCA_SCHADE.jpg
なんとオトコマエのセスト!!!

そして、セストが引き立てられていった後、「俺は皇帝として、親友として正しいことをしたのだろううか」と悩むティトーは、残された紙を、今度は自分に張り付け、自分が裏切り者の紙の帽子をかぶります。ううむ!演出うまい!

ティトーが自ら張りつけた裏切り者のレッテルは、「慈悲深い皇帝としての自分」「セストの親友としての自分」を裏切った、という意味と捕らえたら、この一見笑える演出も意味を持ってきます。

●まとめ

というわけで、ティトー、本当に演出がドンぴしゃ好みでした!しかし、みんながみんな私みたいに感じるわけでもなく、同じ演出をみても、何の意味も見いだせなかった人もいるようなので、本当にこれは、演出家と感性が似ているか、っていうことなんじゃないかな。

後、すっかり書くの忘れてたけど、モーツァルトの作品なんです。聞きやすくて耳に優しい曲が多かったけど、セストやヴィッテラ、悩むティトーなど、感情の盛り上がりがストレートに伝わってきました。

しかし、セストの男前っぷりと迫力の演技、ティトーの感情のアップダウンの表現、「悪い女」を演じきったヴィッテリア、「いい人」まっしぐらのアンニオと彼女、モデルの通行人、コーラスのみなさんなど、みんなすばらしかったです。一人として無駄な人は舞台上には立っていないし、一つとして無駄な小道具はなかった、すばらしい舞台でした!!

ガランチャももちろんすばらしかったけど、演出がこんなに好きになるとは思わなかったわー。同じ演出家の作品、またみてみようかなー。


LA CLEMENZA DI TITO
Sonntag, 27. Mai 2012 | 19:00 | in italienischer Sprache

4. Auffuhrung in dieser Inszenierung

Louis Langree | Dirigent
Jurgen Flimm | Regie
George Tsypin | Buhne
Birgit Hutter | Kostume
Wolfgang Goebbel | Licht
Martin Schebesta | Chorleitung

Michael Schade | Tito
Juliane Banse | Vitellia
El?na Garan?a | Sesto
Chen Reiss | Servilia
Serena Malfi | Annio
Adam Plachetka | Publio

オーストリア人気ブログランキングへ
ヨーロッパFC2ブログランキングへ
関連記事
秘密

トラックバックURL
→http://wienok.blog119.fc2.com/tb.php/1176-9b8eb32b