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2005-06-19 00:34 | カテゴリ:フォルクスオーパーVolksoper作品
サウンド・オブ・ミュージックの本場、オーストリアで本物をドイツ語で見てきました。

ちなみに、前もどこかで書いたけど、オーストリア人はこの映画、ほとんど知りません。海外に詳しい、オープンな人くらいしか名前は知らないし、見たことある人は私の周りのオーストリア人では一人しかいません。(それも、私が強制的に見せた。。)というわけで、今回の公演はオーストリアで初演。多分ドイツ語バージョンも今回が初演のようです。(どこを探してもドイツ語の歌詞がなかったので。。)

それじゃ、前置きはここまでにして、感想いきます!

はっきりいって、大満足です。もう、言うことないくらいの大満足です。名作はやっぱり名作。時代を超えて語り継がれる作品です。

というわけで、今回の感想文は毒舌もなし、ムキムキもなしですが、こういうのもときどきはいいかな。

全体的には、子供たちがかわいすぎで1幕は半分くらい「かわい泣き」してました。マリアもかわいい!いや、そんなに若い役者さんじゃないと思うんだけど、演技がかわいい!それに、歌もうまい!一曲目の「サウンド・オブ・ミュージック」ではちょっと怪しかったものの、後は、完璧!音域ももちろんぴったりだし、演技をしながらちゃんと歌が歌えてる!それもとても楽しそう!

一幕で有名な歌が出まくったので、もう2幕は新しく出てくる曲はエーデルワイスしかないんじゃ・・と思ってたんだけど、結構2幕も新しい曲(映画にはない曲)が多くて、それはそれでよかったよ。

2幕はいろんな意味で感動。「かわい泣き」以外に「愛っていいなあ泣き」「この歌名曲だよ泣き」「よかったなあ泣き」「やっぱりお前はいいやつだよ泣き」など、終わったときには相当泣いてました。

映画と違うのは、まず言語。有名な映画なので、WSSのようにせりふはドイツ語、歌は英語なのかなと思ったんだけど、全部ドイツ語でした。まあ、オーストリアの話を英語でするのも本末転倒というか、実際にトラップ家の皆さんはドイツ語でしゃべってたわけで、それが正しいんだろうなあ。それに、ドイツ語のスタンダード訳がまだ存在してないので、多分、オーストリアで初公演をした記念にドイツ語の歌詞も作っちゃったんだと思います。

ほかも、ちょっとずつ違うシーンがありました。歌の順番も微妙に変えてあるし。my favorite things♪は、映画では子供たちが雷の夜に怖くなってマリアの部屋に来て、そのときにマリアが元気付けるために歌う歌なんだけど、舞台では修道院にいるときにすでに歌っていました。雷のシーンで歌うのは「小さな羊飼い♪(レイヨルレイヨルヨーってヨーデルする曲ね)」で、この曲は映画では、人形劇をしながら歌ってた気がする。
3曲くらい舞台用に新しく作った曲があったよう。あまり違和感なく入ってたし、よかったと思います。

あと、舞台版は子供たちとマリアが仲良くなるのが早っ!マリアがトラップ家に来て、その日のうちにドレミの歌♪を教えてあげて、速攻子供たち全員と仲良くなってる!確か映画では映画の半分くらいが子供と仲良くなるのに費やされて、一人ずつ仲良くなっていったって感じだったと思うんだけど、舞台では、反抗期で思春期のはずの長男ですら、えへへーという感じでドレミの歌にノリノリです。17歳って多感な年頃でドレミの歌程度に踊らされないと思うんだけどなあ。

でも、舞台でよかったのは、全体が大きく三つに分かれていて、子供たちと仲良くなる部分、トラップ大佐とのラブストーリーが展開する部分、オーストリアがドイツに併合された政治的問題について語られる部分が、順番に繰り広げられるのがわかりやすくてよかったよ。映画だとこの三つの大きなストーリーの枠組みが同時進行なので、舞台のほうがシンプルになっててわかりやすいと思った。

●キャスト

マリアは、冒頭でも書いたけどかわいい!なんか、わかりやすい性格で歌もうまいし演技もうまいし、こういうマリアだったら、お母さんになってもらってもいいなあという感じ。トラップ大佐が好きになるのも結構わかります。

子供たちはもう、かわいいの一言!特に長女のルイーザの歌が飛びぬけてうまい!プロだろ!と思った。長男は前も書いたけど、思春期のはずなのにいい子でお坊ちゃま。ほかの子もかわいい!ウィーン少年合唱団から子供をつれてくれば楽だろうにと思ったんだけど、ちっちゃい子供役は女の子が多いのね。

あと、7人いるとドからシまで一人ずつ担当できるのがいいね。最後のコンサートのシーンで全員デアンデル(オーストリアの民族衣装)を着て出てきたのがかわいかった!

今回の一番の注目はトラップ大佐。渋!!!おじさま!!!もう、歌いだす前から、この声はいい!と目をつけていたのですが、まず、顔が渋い!声も渋い!演技や態度も渋い!いやあ、こんなおじ様なら素敵。。と目をきらきらさせながら追っていたわけですが、マリアと恋に落ちてからは結構でれでれしたので、渋さがだいなしです。でも、恋に落ちたから歌うようになって、その渋い美声を聞かせてくれるので、やっぱりトラップ大佐万歳です。コンサートのシーンでエーデルワイスを歌いながらむせび泣くところは、私も号泣でした。

あとの役は、一番偉いシスター役の人が絶唱!climb every mountain♪(すべての山に登れ)は私の大好きな歌なので、シスターが絶唱したときは涙がだーっと。。やっぱり、この歌は名曲だよ。。

トラップ家の執事さんは、めんどくさそーなウィーン訛りだったので、客席が受けてたよ。(ザルツブルグ訛りじゃあないのはよくわからないけど、その辺は突っ込まずにおきましょう)

●演出

舞台装置がまたいい!修道院のシーンで、ステンドグラスのように見せる照明や、I am sixteen, going on seventeen♪で月に山の陰が落ちている様子が細かくていい!特にモダンな演出や奇抜なセットを使っているわけでもなく、スタンダードにわかりやすく演出してくれて、結果的にそれが一番よかった。WSS見たときはモダンな演出がかえって失敗したけど、SoMはオーソドックスにやってくれてよかった。。

トラップ大佐とマリアの結婚式のシーンでは、二人を中心に子供たちが周りを囲む立ち位置が絵としてもとてもいい!あと、なんと言ってもよかったのは、一番最後の山を越えていくシーン。映画では、実際にアルプスの峰を歩いているシーンで終わるんだけど、舞台上でどうするのかと思いきや、奥に山の峰のセットが組まれ、トラップ家9人が手をつないでシルエットになっていく様子でとてもうまく表現されていました。(そのとき、シスターがすべての山に登れ♪を前景で熱唱していて号泣)

あと、コンサートのシーンでは、ナチスに見張られているという設定なので、客席にナチスの兵隊さんが入ってきて、見張るような位置に立ったので、監視下にあるという感じの演出がよくできていました。私は立ち見だったので、自分の目の前に兵隊さん役の人が立っていてちょっと、おちょくりたくなったけどやめときました。トラップ一家が逃げたときには、警察犬まで登場し、舞台を走っていたのがかわいかったよ。

少し難をいうと、I am 16 going on 17♪では、有名なあずまやのシーンなので、できればセットにあずまやを組んでほしかったなあ。。あと、ドレミの歌のシーンでは映画では歌を歌いながらザルツブルグの町に繰り出していくので、その様子も演出できればよかったかなあと思ったけど、まあ、仕方ないかな。

●オーストリア人の反応

やっぱり、自分の国が舞台になった世界的ミュージカル。オーストリア人の反応は気になるところです。

まず第一に、観客はSoM初心者がほとんどだ!日本でSoMをやると、みんなストーリーはもう知ってるので、お!ここが映画と違うな!という視点で見るんだろうけど、オーストリアのお客さんは普通に始めてみる感覚でウケてる!たとえば、トラップ大佐が最初に子供を呼ぶのに笛を吹くのは、一度映画見た人なら別に「そんなシーンもあったなあ」程度のシーンなのに、オーストリア人はびっくりのムードが!いや、これは世界的には驚くところじゃないって。。

一番気になったのは、オーストリアがドイツに併合されたあとナチスの兵隊さんたちが「ハイル・ヒトラー」というところ。実は、オーストリアは「ハイル・ヒトラー」と言ったり、ナチスのポーズ(手を高く差し上げるポーズ)をしたり、ハーケンクロイツ(ナチスのマーク)を掲げたりすることは、法律的に禁止されています。(舞台上ではOKらしいけど)それだけ、ナチスとオーストリア併合の過去はオーストリア人に黒い影を落としているということでしょう。

なので、舞台上で役者が「ハイル・ヒトラー」といったときに、日本人の観客なら「ああ、そういう時代だったからなあ。」程度で軽く流すところですが、オーストリア人はまるで悪魔でも見るような反応をしました。客席は不吉な感じでざわざわとして、みんな落ち着きがなくなりました。コンサートのシーンでは、もちろんナチスをたたえるためのコンサートという名目なので、舞台上には大きなハーケンクロイツの旗がかかっています。これも、舞台のセットとして軽く流せるところが、オーストリア人はかなり抵抗があったようです。

同行したオーストリア人に感想を聞くと、「子供たちがかわいかった!」とか「おもしろかった!」とか言う代わりに、「トラップ大佐みたいないい人(=反ナチス)もいたんだね。」といっていました。ちょうど第二次世界大戦前(中)にオーストリアがドイツに併合されたときは、オーストリア人の1/3くらいはなぜか併合に賛成していました。これは今のオーストリア人からしたら屈辱でしかないわけで、絶対に併合に反対していたトラップ大佐がヒーローのように見えたようです。これは、SoMを娯楽としてしか見ていなかった私にとって結構衝撃でした。楽しいミュージカルの裏に、ここまで身近な政治的時代背景を読み取り、さらにその問題が今まで続いているとなると、このミュージカルは私たちが受け取るよりも重い物としてオーストリア人の心に響いたようです。

エーデルワイスをソロで歌うトラップ大佐が、途中で涙で詰まって歌えなくなってしまったとき、客席のオーストリア人は皆、トラップ大佐と同じ気持ちになっていたのではないかと思います。

でも、このミュージカルが名作なのは、こういう政治的背景があっても、やっぱり歌を歌う楽しいシーンや、ジョークを忘れないトラップ一家の様子が暗さを感じられず明るく描かれているところだと思います。オーストリア人にしかわからないジョークも取り混ぜてあり、観客のほとんどがSoM初体験だったと思いますが、相当満足していたようです。

私が映画で何度見ても号泣してしまうシーンに、コンサート会場から修道院を抜けて逃げ出すときに、ナチスの兵隊さん(長女の元恋人、I am sixteen going on seventeen♪の歌を歌った相方)が、見逃してくれるところがあります。こんな絶望的な世の中でも、みんなが悪いわけじゃないんだなあと思わせる、希望の持てるシーンです。

やっぱり、このミュージカルは何度見ても感動する、長く愛される名作だなあと、本場オーストリアで見て改めて思いました。
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