2011-06-03 19:38 | カテゴリ:ウィーンを舞台にした映画
ジャンル:海外情報 テーマ:ヨーロッパ
さて、もう気になりだしてから10ヶ月ほど経ってしまってますが、やっと行ってまいりました。ドナウ溺死者無名墓地Frieldhof der Namenloesnのレポです。

この無名墓地、映画Before Sunrise(邦題「恋人までの距離(ディスタンス)」のロケ地のひとつなんです。映画で初めて知って、とても雰囲気のあるいい墓地なので行ってみたかったところの一つです。

去年8月ごろに書いたBefore Sunriseのレポ群でも、一番興味を持って書いてたのがこの無名墓地。
映画Before Sunrise
http://wienok.blog119.fc2.com/blog-entry-130.html
Before Sunriseの無名墓地
http://wienok.blog119.fc2.com/blog-entry-129.html
Before Sunriseの台詞集
http://wienok.blog119.fc2.com/blog-entry-128.html
Before Sunriseロケ地情報
http://wienok.blog119.fc2.com/blog-entry-127.html

墓地の歴史なんかは、上記の無名墓地レポをどうぞ。日本語ソースないので、オフィシャルサイトを要約したりしてまとめてます。

簡単に説明すると、この無名墓地は、1845年から1940年の間にドナウの港周辺で見つかった人たちのお墓です。ドナウで溺死した人たちが、水中の渦に巻き込まれてこのあたりによく浮かんでいたのを、有志の墓守Joseph Fuchsさんが地元の家具屋に頼んで棺桶を作ってもらい、一人ひとり丁寧に埋葬した墓地です。後にこのFuchsさんは地道な功績を認められ、ウィーン市から勲章を受けています。うーん。こういう話好きだなあ。それにウィーン人も好きそうな話だ。。

で、ちょうど日曜午後にポコッと時間が空いたので、同行者に頼んで付いてきてもらった。カーナビに住所を入力すると、思ったより遠いことが発覚。映画では確か、トラム→U4と乗り継ぎしてたと思うんだが、実際の場所は11区の一番端っこ。空港のすぐ近くなので、地下鉄なんて通ってないし、公共の交通機関じゃ辿りつけない。かろうじて76Aというバスが走ってるけど、バス降りてからまだ相当歩かないと無理だとおもう。どうやって映画の二人はあんなに速く(それも間違った交通機関でww)ここまでたどり着いたんだろうww。映画のからくりだねwww。。。

この辺りはウィーン郊外の工業地帯で、大きなロジ倉庫や下水処理場なんかがある。ナビに従って車を走らせても、さびれた工場の敷地内を通ったりして、不安になるくらい人里はなれたところ。その先を行くと、Alberner Hafenというドナウの港にたどり着く。ここは河で漁業をする人たちの組合があって、おそらく漁業従事者以外はほとんど用がないのでは。漁師さんたちの魚をとる網と小屋と小さな食堂しかない、ものすごく静かなところに、Frieldhof der Namenloesnの標識はある。同行のウィーン人も、こんな所はもちろん初めて。

この墓地には1900年までの無名遺体を埋葬した第一の墓地と、それ以降1940年まで使われた第二の墓地がある。第一の墓地はなんども水没し、今は木の板で覆われていて、どこがお墓でどこが通路なのかもはっきりしない。ただ一本、Namenloseと書かれた鉄の十字架が草の中に立ちすくんでいる。

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第二の無名墓地のほうが、この映画に登場した墓地。チャペルが入っている太った円柱の塔が見えたときは、映画そのままで結構興奮した。

映画と同じように向かって右側の階段を降りる(この階段のそばにウサギがいたんだよ!よく考えるとオーストリアの自然のウサギは茶色なので、なんであんなところに白黒のウサギがいたのか謎なんだが。。)。

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チャペルの塔

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チャペルの中を覗いて

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Joseph Fuchsさんの勲章のことが書いてある

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チャペルの建造に関して

そして、チャペルを十分調べてから、無名墓地の入り口に向かう。だんだん興奮してきた。ちょっと怖いけど。

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無名墓地入り口。Frieldhof der Namenloesnと左側にある。

ちょうど映画の時期も6月だったので、草ぼうぼうっぷりが映画そのままで既視感がすごい。

どれも黒い鉄の十字架に白い字で名前が記してあり(無名墓地という名ではあるけど、三分の一くらいは名前が分かっている)、草は高く生えてはいるがちゃんと整備されている印象をうける。所々お花やろうそくが供えてあったり、子供のお墓はおもちゃやぬいぐるみがかけてあったりする。

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Namenlos(無名死者)と書かれた十字架

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手前のぬいぐるみがかかった十字架はSepperlという子供のお墓。

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入り口のろうそく

とても静かで、落ち着いた静粛な気分になる。訪ねてくる人は全くいないわけではなく、時々サイクリングがてら来る人がいる模様。ウィーン人にとっては、一応名前は聞いたことがあるので、機会があれば来てみたかったと思っている場所、という位置づけのよう。

小さい小さい墓地なので、10分もあれば十分見て回れる。それにしても静かだ。ウィーン市内で、それも工業地帯の奥にあるとは信じられない静けさ。

天気がいいので少し散歩してみたくなり、駐車場の向こうの原っぱを歩いてみる。ここも牧草地と漁師の小屋しかない、耳が痛くなるくらい静かな場所。ドナウの川の流れが変わるまでは、この辺りは溺死者が浮かぶエリアだったのね。。今は、ドナウのこちら側も、対岸に見えるドナウインゼル側も、川魚を採る網くらいしか人工のものは見えない。この漁師さんたちが、今でも毎年一回、無名墓地の埋葬者を祭って船を出す日があるんだとか。こういう所で魚を採っていたら、この墓地のことがやっぱり身近に感じるんだろうね。

しかし、ちょっとこの静けさは私の中でずいぶん堪えた。ウィーンの郊外や田舎は色々行ったし、お気に入りの散歩道もあるけど、ここみたいに開けていて、人がほとんどいなくて、耳が痛くなるくらい静かなところは見たことがない。墓地だけじゃなく、この辺りの空気には、なんだか人を静粛な気持ちにさせる何かがある気がする。とてもなんとなくだけど、アウシュヴィッツ(ビルケナウの方)の静けさと少し共通する点がある気がした。
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