2011-03-25 08:15 | カテゴリ:ウィーン生活
前の日記を書いてからどんどん気になってきたので、今度はちゃんと調べてみました。一問一答形式で行きます。

Q
オーストリアの電力ミックスは?

A
2007年の国内で発電された電力のうち、28%が水力、48%がそれ以外の再生可能エネルギー、14%が天然ガス、9%が石油です。水力とその他の再生可能エネルギーを足すと76%になります。また原子力は0%です。

オーストリアは水力発電は非常に盛んで、EUではノルウェー、スイスに次ぐ水力発電大国です。

http://www.bmwfj.gv.at/EnergieUndBergbau/Energiebericht/Documents/Energiestatus%202009.pdf

Q
再生可能エネルギー(Oekostrom,Renewable Energy)の内訳は?

A
水力発電が一番多いのですが、その次が風力(再生可能エネルギー全体の2/3)で、15%がバイオマスとなっています。太陽熱発電もいくらかあります。

http://de.wikipedia.org/wiki/Österreichische_Energiewirtschaft


Q
オーストリアの天然ガスと石油の供給は?

A
天然ガスと石油は中東、コーカサス地方、ロシアから輸入されています。2008年にはオーストリア国内での天然ガスと石油生産により、それぞれ11%、13%は国内生産された原料でカバーできるようになりました。


Q
オーストリアって寒い国なのに、暖房のための電気はどうやってやりくりしてるの?

A
暖房はほとんどがラジエーターの温水です。この温水は、地域熱供給というシステムで、電力とは別に提供されています。

地域熱供給とは、発電所で電気を作るのではなく、地域ごとにまとめて水を温めて温水を作り、これを使って暖房や家庭用温水に使用するシステムです。

つまり、日本でオール電化だと、暖房(ヒーターやエアコン)、お風呂の湯沸し、蛇口をひねって出る温水も電気で温めたものですが、たとえば我が家ではラジエーター、お風呂やキッチンの温水は、地域熱供給の施設で温められた水でまかなわれています。そのため、直接電力は使っていないことになり、電気代にも入っていません。

(詳しくは日本語の解説をどうぞ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E7%86%B1%E4%BE%9B%E7%B5%A6


この地域熱供給で温水を作る燃料の内訳は、52%がガス、15%が石油、21%がバイオの燃焼、6%が石炭で、6%がごみ焼却です。2003年度の統計によると、16.6%の家庭が地域熱供給でまかなわれているそうです。

http://de.wikipedia.org/wiki/%C3%96sterreichische_Energiewirtschaft

(ひとこと)

ウィーンに住んでいる人は、SpittelauのHundertwasserのごみ焼却場に巨大な文字でFernwärme と書いてあるのを目にした人もいるでしょう。上記の内訳のごみ焼却パートが、おそらくSpittelauのごみ焼却場から官庁、国連、大学などに送られている暖房用の地域熱供給なのだと思います。我が家もこれに入ってます。(この辺の詳しいことは、ごみ焼却場の内部案内ツアーで詳しく解説してくれます)

これも、電気を使っているわけではないので、節電の一種と言えるかもしれませんし、ごみ処理場と組み合わせれば資源の節約にもなります。正直、このごみ焼却場の内部見学に行ったときには、エネルギー効率のよさに相当びっくりしました。興味が有る方は見学お勧めです(http://www.wienenergie.at/we/ep/channelView.do?channelId=-25573)。


Q
本当にオーストリアには原発はないのですか?

A
正確に言うと、オーストリアには「稼動中の」原発はありませんし、オーストリア国内で原子力を使って電力が発電されることはありません。これにはちょっとエピソードがあります。

Zwentendorf(ウィーンから15キロほど北のドナウ沿い)に1972年に原発が建造され、オーストリアの電力の10%をまかなうことになっていましたが、1978年に社会党のクライスキー首相(かの有名な!)が国民投票を告知し、同年投票が行われました。

結果、有権者の2/3(326万人)が投票し、49.5%が賛成、50.5%が反対しました。Zwentendorfの原子力発電所は完成しましたが、原子力を用いての電力を発電することはありませんでした。

翌年には、原子力のないオーストリア(http://www.salzburg.gv.at/1999a149.pdf)という法律ができ、非核三原則に加えて、"Anlagen, die dem Zweck der Energiegewinnung durch Kernspaltung dienen, dürfen in Österreich nicht errichtet werden."「核分裂でのエネルギー生産を目的とした施設をオーストリア国内に建設してはならない」とされました。

http://en.wikipedia.org/wiki/Anti-nuclear_movement_in_Austria

(ひとこと)
いやあ、なんとも現代の御伽噺みたいな話ですが。この話は聞いて知ってたけど、まさか、国民投票でここまで僅差だったとは。。そのくせ全員反対だったみたいな顔してるぞ、今のオーストリア人。なんとなくトラップ大佐のころのナチスに対する考え方を髣髴とさせるオーストリア人の記憶のすり替えがちょっと気になりますが、ま、見なかったことにしておいてあげましょう。今原発なくて幸せそうだし(笑)。しかし、国民投票の直後に法律まで作っちゃうとは、すごい勢いだったのね、当時。


Q
オーストリアで原子力を使って発電された電気は使われていますか?

A
オーストリアでは原子力での発電はしていません。しかし、ヨーロッパの他の国から電力を輸入しているので、その中に原子力で発電されたものも含まれます。

オーストリアの消費者の17.5%に届く電力は、出所不明のものです。そのうちヨーロッパ平均である1/3が原子力エネルギーであるとすれば、オーストリアでは約6%が原子力で発電された電力を使っていると言えるでしょう。ドイツから輸入する電力がどこでどのように作られたかは機密されているので、はっきりした数字はわかりません。

http://www.e-control.at/de/konsumenten/news/aktuelle-meldungen/atomstrom-und-oekostrom

あと、上記で水力発電が盛んだと書きましたが、水力発電をするために必要な電力自体を、同じくドイツから輸入しているため、水力発電が再生可能エネルギーとはいえ、その電源に一部原子力ソースのものが使われている可能性があるとのことです。

http://www.stern.de/politik/ausland/atomkraft-debatte-wie-oesterreich-ohne-akw-lebt-1664397.html

(ひとこと)

この情報探すのにものすごい苦労したぞ。。。オーストリアの電力輸入について、環境庁もStatistik Austriaも触れてないんだもん。。

GreenpeaceとGlobal2000というNGOには一応記事はあるものの、ちょっと日付やソースがはっきりしなかったので、採用しませんでした。どちらのサイトにも、輸入元はドイツとチェコと書いてありました。あと、上記の記事が6%と言っているのに対し、GreenpeaceとGlobal2000はどちらも20%とちょっと信じがたい高い数字を根拠もなく挙げていたのも、採用しなかった理由です。

で、上記のソースe-controlはちゃんとしたエネルギーコントロール機関ですので、情報は信用できると思います。

あと、ドイツのメディアでWie Österreich ohne AKW lebt 「オーストリアは原発なしでどうやって生きていくのか」という記事がなかなか外部からの視点でうまくまとめてあります。

http://www.stern.de/politik/ausland/atomkraft-debatte-wie-oesterreich-ohne-akw-lebt-1664397.html

ちなみに、オーストリアが電力を輸入し始めたのは2001年からのようです。


Q
オーストリアで確実に原子力を使っていない電気を使うことはできますか?

A
オーストリアでは、家庭で利用する電力会社をある程度選択して契約することができます。100%グリーンエネルギー(水力、バイオマス、太陽熱、風力)を供給しているのは、22社です。リストはこちら(http://www.e-control.at/de/konsumenten/oeko-energie/lieferanten-von-oekostrom)。有名なものはOekostromやVerbundなどです。

http://www.e-control.at/de/konsumenten/news/aktuelle-meldungen/atomstrom-und-oekostrom

(ひとこと)
我が家は、上記のように暖房、温水は地域熱供給で、ごみ焼却場の廃熱を利用していますし、電気はOekostromの風力発電でまかなっています。(有名なVerbundは水力発電がメインです)

こないだフランスに住んでたときに、ラジエーターではなく電気の暖房だったんですが、冬場の請求書を見て目玉が飛び出したよ!ウィーンのアパートだったら、暖房、温水は家賃に含まれてて、ほぼ使いたい放題です。(あまりにも多いと超過分の請求が来るらしいですが、私お風呂入りまくりだけど全然超過しません。アパート暖かいから暖房つけなくてもいい時もあるのもあるけど。)

私が自ら選択したエネルギーオプションではないとはいえ、そして、住んでいるのがアルトバウ(古い形式で建てられた歴史的な建物)というわけではないのもあって、最新の省エネシステムで設計されているところに住んでいるようです。なんとなくちょっとほっとしたかも。


というわけで、環境問題では結構進んでいるとEUでも定評のある、オーストリアの電力事情をまとめてみました。これから日本でやってくると思われる、省エネ政策になにか役に立つネタがあればいいな。

国策としてのエネルギー政策は、巨額の設備投資、国民の意識改革のどちらも必要。今回の件でいい方に転換期を迎えてくれればいいな、と思ってます。そんな時、あまりにも小国で見向きもされない(笑)オーストリアでも、結構いいことやってるよーって参考にしてもらえればいいんだけどなー。
2011-03-25 08:12 | カテゴリ:ウィーン生活
なんだか周りに専門家がいっぱいいる中で、原発問題を論じるのもちょっと気が引けるんですが、日本とオーストリアの原発政策や国民感情があまりに両極端なので、ちょっとこのあたりで比較しておきたいと思いまして。

一応、オーストリア?原発あるの?ないの?的に思ってる日本のみなさんに、オーストリア人の立場や考え方をちょっと紹介しようかな、と言う、軽い感じの日記ですー。オーストリア在住の方は多分知ってることばっかりかな。

できるだけバランスの取れた視点から考えたことをまとめてみたつもりですが、別に私は専門家でもなんでもないので、細かいこととか間違ってても、大目に見てやってくださいな。

ーーー

とりあえず、基礎知識。オーストリアには原発はありません。国民は強硬な原発反対派が多く、代替エネルギーや環境問題では結構進んだ国だと言われています。

いや、今日のOesterreichという地下鉄で配ってる無料新聞の見出しが「フクシマ原発放射線雲がオーストリアに到達」http://www.oe24.at/welt/japan-beben/Fukushima-Atomwolke-ueber-Oesterreich/20977990ってあって、正直笑ってしまったんだけど、ほんとこんな誤解を招く見出しやめてほしいわ。。

記事を読めば「レイキャビク(アイスランド)で3日前に検出されたヨード131が測定出来るか出来ないかぎりぎりの値でした。オーストリアではほぼ測定不能の値となります。夏に芝生で寝っ転がってるほうが浴びる放射線量は多いくらいです。」だってさ。見出し大騒ぎしすぎ。地図も馬鹿かと。まあ、まともなオーストリア人が読むレベルの新聞じゃないわけですが。

で、その足でトラムに乗ると、生真面目インテリっぽいおじさん(Oesterreichを読む層とはまた違う感じ)がスーツの胸元に「原発反対」っていう黄色い缶バッジ付けてるの。目を疑ったわ。オーストリアが原発強硬反対って言うのはわかったから。。こういう人に限って、日本は原発があるから悪者!みたいな視野の狭い議論になるからいやなんだよ。。

原発強硬反対のオーストリアに住んでるおかげで、原発を擁護する発言をせざるを得ないことが多いんだけど、正直原発反対できてる国は、それだけの国ってこと。オーストリアなんて小国だし、たいして大きな産業もないし、人口もちょっとだし、原発なんてそもそも必要ないレベルの国なわけ。日本みたいにサイズも人口も大きいわ、産業は発達しまくってるわ、その割に資源が少ない、全然現状が違う国と一緒にしないでほしいっつーの!っていつも思います。

日本は色々考えた結果、やっぱり危険を承知で原発しか選択肢がなかったのは、正直仕方ないと思う。ただ、原発どしどし作れ!電気どしどし消費しよう!みたいな流れになっちゃったのはちょっと残念かな。こないだボイスでつぶやいたけど、日本の全部の自販機合わせたら、原発一基分の消費電力なんだってさ。ちょっと調子に乗りすぎちゃった?

まあ、オーストリアが笑っちゃうほど原発に過敏に反応してるのは、隣国(チェコ、スロバキア、スロベニア、ドイツなんか)がみんな原発持ちな国っていうのが関係ある。特に東欧の整備不良気味な原発が、首都のウィーンから50キロのところにあるわけ(スロバキア国境近く)。こんなことされたら、自国でいくら強硬に反対してても、実際事故が起きたらオーストリアなんてひとたまりもないよね。。なんか、国の規模と言い、立ち居地といい、なんだかちょっと哀れな気がするよ。

あと、オーストリアは原発反対してる代わりに、一般人がすごい電気の消費に気を使ってるのは、見習うところもあると思う。ごみ処理場でごみ燃やして出た熱で官庁や国連や大学の暖房にしてるし(我が家もね)、田舎に行けば風力発電すごい(風が安定して吹いてるのもラッキー)。一般家庭でも、太陽熱、地熱(地下と地上の温度差を利用してる)、暖炉(居間の暖炉で木を燃やして家中のセントラルヒーティングにしてる結構ハイテクなシロモノ。一抱えの木で3階建ての家が一日暖かい)は結構普通にあるし、雑誌とかでもよく特集見かけるよ。

というわけで、かなり原発に対しては両極端なオーストリアと日本だけど、それぞれそうならざるを得ない背景があって、国民がその国の方針をサポートしたからこそ、今の姿があるんだよね。結局、国策と国民の選択なわけですが、それをメディアが煽ったり、頭悪い記事を書いたりしてゆがめるのは、どちらの国もやめてほしいな。国民がちゃんとした頭と情報を手にして、その国の背景や未来を考慮に入れて、きっちり納得のいく選択していくべき問題だと思います。

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